1999 Fiscal Year Annual Research Report
共役系の配位的フレキシビリティーを利用した均一系炭素-炭素結合生成触媒の開発
Project/Area Number |
10450343
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永島 英夫 九州大学, 機能物質科学研究所, 教授 (50159076)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松原 公紀 九州大学, 機能物質科学研究所, 助手 (00294984)
|
Keywords | 有機金属錯体 / 銅 / ビピリジン / 触媒 / 炭素-炭素結合生成反応 / ラクタム / ルテニウム / アミジナート |
Research Abstract |
効率的な触媒的炭素-炭素結合生成反応の開発は、現在の有機合成化学における課題である。本研究においては、とくに共役π電子系、窒素原子を含む共役π電子系の配位的フレキシビリティーを利用した効率的な分子触媒開発を目的に、これらの配位子をもつ新しい有機金属錯体の開発、素反応過程の解明、触媒反応設計と実現についての研究を遂行している。本年度の成果は、とくに窒素を含む共役系について2つの新しい成果を得た。まず、銅と含窒素共役系配位子であるビピリジン触媒が有機化合物の炭素-塩素結合のラジカル的な解裂の良好な触媒になることを見出し、これを含窒素環状化合物の新規合成法へと展開した。まず、従来活性化が困難であったα、α-ジクロロラクタムの炭素-塩素結合活性化に成功し、N-アリルトリクロロアセトアミドをオレフィンの存在下に銅触媒で処理することにより、1段階でα位とβ位に置換基を有するラクタムの合成が可能であることを示した。立体選択性の解明を、結晶構造解析を用いておこなった。銅-ビピリジン触媒による N-アリルトリクロロアセトアミドの活性化は、アルカロイドの基本骨格であるメセンブラン、クリナンの容易な全合成を可能にした。効率的な反応の鍵として、新触媒の利用とともに、窒素原子上への電子吸引性置換基の導入が必須であることを見出し、結晶構造解析や溶液中での動的挙動の解明により、反応機構を明らかにした。もう一つの成果は、新しい配位不飽和ルテニウムアミジナート錯体の合成の達成である。配位不飽和錯体は、多くの触媒反応の中間体と想定されているが、その物自体の単離例は少なく、構造と反応性の解明が課題とされている。本研究では、含窒素共役系配位子であるアミジナートの特異性な性質を利用した16電子錯体の合成に成功したもので、その特異な立体構造と高い2電子配位子との反応性を明らかにし、この錯体を用いた触媒設計の基盤を形成した。
|
-
[Publications] Y.Yamaguchi and H.Nagashima: "(η^5-C_5Me_5)Ru(amidinate): Highly Reactive Ruthenium Complexes Formally Bearing 16 Valence Electrons Showing Signs of Coordinative Unsaturation"Organometallics. 19(5). 725-727 (2000)
-
[Publications] S.Iwamatsu,K.Matsubara, and H.Nagashima: "Synthetic Studies of cis-3a-Aryloctahydroindole Derivatives by Copper-Catalyzed Cyclization of N-Allyltrichloroacetamides: Facile Construction of Benzylic Quarernary Carbons by Carbon-Carbon Bond Forming Reactions"Journal of Organic Chemistry. 54(26). 9625-9631 (1999)
-
[Publications] S.Iwamatsu,H.Kondo,K.Matsubara, and H.Nagashima: "Copper-catalyzed Facile Carbon-Carbon Bond Forming Reactions at the α-position of the α,α,γ-trichlorinated γ-lactams"Tetrahedorn. 55(6). 1687-1706 (1999)
-
[Publications] H.Nagashima,A.Suzuki,H.Kondo,M.Nobata,K.Aoki, and K.Itoh: "A Tetraruthenium Carbonyl Cluster Bearing Indenyl-type Ligand as the Facial Bonding Mode"Journal of Organometallic Chemistry. 574(1). 133-141 (1999)
-
[Publications] 羽村敏、永島英夫: "4族遷移金属錯体の化学"有機合成化学協会誌. 57(8). 698-707 (1999)