1999 Fiscal Year Annual Research Report
モデル櫛型高分子の粘弾性:メタロセン触媒系ポリオレフィンのための基礎的研究
Project/Area Number |
10450366
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
渡辺 宏 京都大学, 化学研究所, 助教授 (90167164)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 正志 京都大学, 化学研究所, 助手 (80201937)
尾崎 邦宏 京都大学, 化学研究所, 教授 (00027046)
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Keywords | 櫛型鎖 / 2段階アニオン・カップリング法 / 絡み合い緩和 / 管模型 / 束縛解放機構 / 管膨張 / 粘弾性緩和 / 誘電緩和 |
Research Abstract |
近年さかんに製造・使用されているメタロセン触媒系ポリオレフィンについては,長時間緩和が少量の長鎖分岐に著しく影響されると推測されている.しかし,これまでの研究では,分子量分布の影響と分岐の影響が明瞭に分離されていなかった.このような状況下で,本研究では,従来得られなかった枝および幹部分に分子量分布のない櫛型モデルポリブタジエンを,ピリジン基の選択的反応性を利用した2段階アニオン・カップリング法で合成した.その粘弾性挙動を調べた結果,この櫛型高分子の終端緩和は幹部分の緩和であること,絡み合い系の挙動の記述によく用いられる管模型の枠内では,この幹緩和は束縛解放機構で進行することも明らかにした. 現在の管模型では,管の運動は,束縛解放機構に対応した遅延Rouse型運動をもたらすのみでなく,管の動的膨脹ももたらして鎖の緩和を誘起する.特に,分岐鎖については,管膨張過程が重要な緩和過程であると考えられてきた.しかし,束縛解放過程と管膨張過程を識別し,管膨張過程そのものを実験的に検証した例はない.上記の櫛型鎖の緩和をさらに精密に理解するため,より基本的な直鎖および星型鎖について管膨張過程を検証した. この検証においては,鎖骨格に平行な双極子を有する鎖の大規模運動は粘弾性量と誘電量に異なる形で平均化されていることに着目し,鎖の緩和過程で管が膨張する場合に成立する粘弾性緩和関数と誘電緩和関数の関係を導出した.直鎖単分散系についてはこの関係が成立し,管が実際に膨張していることを見い出した.一方,星型鎖単分散系および直鎖ブレンド系についてはこの関係は成立せず,管膨張が完了する以前に束縛解放機構によって鎖の終端緩和が起こることを明らかにした.この結果は,星型鎖の緩和が管膨張に支配されているとする従来の考え方に訂正をもたらす結果であり,上記の櫛型鎖が束縛解放機構で緩和することと良く対応した結果である.
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Y.Matsumiya,H.Watanabe,T.Sato,and K.Osaki: "Synthesis and Linear Viscoelasticity of Model Comb Polymers"J. Soc. Rheol. Jpn. 27・2. 127-128 (1999)
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[Publications] Y.Matsumiya,H.Watanabe,and K.Osaki,: "Comparison of Dielectric and Viscoelastic Relaxation Functions of cis-Polyisoprenes: Test of Tube Dilation Molecular Picture"Macromolecules. 33・2. 499-506 (2000)
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[Publications] H.Watanabe,Y.Matsumiya and K.Osaki: "Tube Dilation Process in Star-Branched cis-Polyisoprenes"J. Polym. Sci. part B Polym. Phys.. 印刷中(2000年38巻7号(4月)に掲載予定).