Research Abstract |
本年度は,まず多様な気象条件の露地養液栽培に適した環境を創出するため,内部の昼夜温,光量,降水量,二酸化炭素濃度などの気象要素をマイクロコンピュータによって制御可能な屋根部全面が開放・閉鎖できるフルオープンハウスをスモール・プラネット温室として建設し,本施設の制御特性を検討した.制御対象としては,フルオーブンハウスの屋根開閉度,遮光装置,加温装置,降雨装置などであるが,それらの制御を介して,目的の日射強度,室温,空中湿度,降水量に調節できるように検討した.今年度は,制御特性として低温時の温度環境,光環境,降雨等の施設内の分布について検討し,実際の制御アルゴリズムを検討した.本施設により,試験遂行上問題ない程度の誤差で,この時期の内部環境を作出できたことが判明した. 次に,内部に数種の固形培地を利用した簡易養液栽培システムを試作し,システム内部の培養液・水分の分布状況,3相分布,各種無機成分の溶出・吸着の動態等を,異なる気象条件に制御された温室内で実際にトマトを栽培した条件下でデータを収集した. 培地には,もみがらくんたん,やしがら,ロックウール粒状綿の3種類を供試し,トマト“ハウス桃太郎"を栽培した.1月5日にロックウール培地に播種し,本葉展開時にそれぞれの培地を充填した12cmポットに鉢上げした.育苗中は,園試処方の1/4単位液を灌水し,第1果房開花前の3月1日に試作システムに定植した.なお,生育の遅いトマトについては,現在第一花房の果実肥大期にあり,その結果は明らかでないが,主として培地内の養水分の挙動に注目して試験を行った結果,培地種類により養水分状態に大きな差があることが判明した.今後は,内部を,熱帯,温帯,砂漠の各気象条件を想定した環境に設定し,この条件下でのトマトの生育,養水分吸収,収量等について詳細にデータを収集していく予定である.
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