1999 Fiscal Year Annual Research Report
抗生物質が底泥中微生物に及ぼす影響のバイオマーカー脂質による評価
Project/Area Number |
10460088
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
松田 治 広島大学, 生物生産学部, 教授 (60034469)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 俊也 広島大学, 生物生産学部, 助手 (00253120)
山本 民次 広島大学, 生物生産学部, 助教授 (40240105)
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Keywords | 抗生物質 / バイオマーカー脂質分析法 / 魚類養殖場 / 底泥 / 微生物群集 / 投餌飼料 / インキュベーション実験 |
Research Abstract |
養殖漁場における抗生物質の使用は、近年持ち上がってきた深刻な環境問題の一つである。大規模な水産養殖が世界中の多くの沿岸域で急速に発展してきたために、底泥の有機物量の増加や水域の富栄養化のみならず、様々な環境への影響が危惧されている。餌中に含まれる抗生物質の負荷と抗生物質の難分解性のため、かなりの量の抗生物質が環境中に放出され、底泥中に蓄積する。養殖漁場のような高い堆積速度が認められる環境中では長い間、抗生物質の影響が現れる。本研究では抗生物質が底泥中微生物に及ぼす影響をバイオマーカー脂質分析法により評価することを目的とした。養殖漁場で使用される抗生物質の耐性試験には一般に環境中から分離されたバクテリアが用いられている。一方、環境中の微生物群集構造を知る適当な方法がないことが微生物群集に対する抗生物質の影響の研究を困難にしてきた。古典的な培養法は細菌選択性があり、現場の微生物群集の研究には必ずしも適切ではなかったが,このような古典的な方法に伴う問題点を克服するために、本研究で使用された微生物群集の生化学的研究法が開発されてきた。これらの方法の一つである指標性脂質バイオマーカー(SLB)分析は微生物群集を同定するために細胞膜成分を調ベる方法であり、古典的な方法に比べて優れた点が多い。微生物バイオマス、生菌、死菌の判定、微生物群集構造、栄養状態、毒性に関する情報をバイオマーカー分析により得ることができる。我々はこの分析法を用いて、本年度は以下の計画を実施した。抗生物質の影響に関わる温度実験は・魚類養殖場から採取した堆積物を用いて行った。異なる量の餌料と抗生物質を加え、微生物群集構造と微生物バイオマスの変動をインキュベーション実験により調べた。このインキュベーション実験の結果から異なる温度での抗生物質による微生物への影響が定量的に明らかになった.
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Research Products
(3 results)
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[Publications] N.Rajendran: "Seasonal changes in sedimentary microbial communities of two eutrophic bays as estimated by biomarker"hydrobiologia. Vol.393. 117-124 (1999)
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[Publications] 山本民次: "瀬戸内海福山沖海域の底質環境に関する研究"広島大学生物生産学部紀要. 38巻. 39-45 (1999)
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[Publications] N.Rajendran: "Short-term variation in sedimentary microbial communities in areas of organic enrichment."Fisheries Science. Vol.65. 56-61 (1999)