1999 Fiscal Year Annual Research Report
イトマキヒトデが関知する天敵ニチリンヒトデの生体成分の研究
Project/Area Number |
10460094
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Research Institution | 東京水産大学 |
Principal Investigator |
浪越 通夫 東京水産大学, 水産学部, 助教授 (30189196)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
能登谷 正浩 東京水産大学, 水産学部, 教授 (80208371)
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Keywords | ニチリンヒトデ / イトマキヒトデ / アレロケミカル / カイロモン / 忌避行動 / 化学生態学 / 核酸 / ペプチド |
Research Abstract |
昨年度の予備的な分離実験で,強い忌避活性はODS非吸着部に検出されるが,イトマキヒトデはODSの50%MeOH溶出部にも弱い行動を示すことが分かった。しかし,今回別個体のニチリンヒトデから得られたODS吸着部の活性は前回よりも弱かった。前回はODS吸着部からイノシンとグアノシンを同定したが,今回はイノシンのみ検出した。イトマキヒトデは核酸により近くに生物やその死骸があることを感知して動き出すのではないかと考えられる。よってODS吸着部は忌避行動とは直接関連していないと思われるが,核酸による行動誘起に関してはもう少し実験例を増やす必要があると思われる。 忌避行動を強く誘起するフラクション(ODS非吸着部)はペプチド,タンパク質と考えられた。塩析,透析,ゲルろ過,イオン交換クロマト(アニオン,カチオン),疎水クロマト,アフィニティークロマトなどを行い,各フラクションの忌避行動を調べたが,活性物質は分離操作により分散し,個々のフラクションの生物活性も弱くなった。分散した活性フラクションを再び混合すると,個々のフラクションよりも強い活性を示したが,粗抽出液の活性の強さは再現できなかった。よって,イトマキヒトデに忌避行動を起こさせる物質は安定性の低い複数のペプチド/たんぱく質で,相加・相乗効果を示すと考えられる。活性を示すフラクションをSDS-PAGEで分析したが,クマシ-ブル-では発色せず,銀染色により吸着バンドが確認された。 以上の結果から,ニチリンヒトデの水抽出物から忌避行動を誘起する化合物を分離するのは,爽雑物が多すぎるので大変難しいと判断した。そこでより有効な方法を求めて,ニチリンヒトデの体表粘液,胃内容物,肛門排出液の忌避活性を調べ,胃内容物と肛門排出液に強い活性を見いだした。得られる量や爽雑物を考慮し,今後の分離操作は肛門排出液から行うのが一番有利であると結論した。
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