2000 Fiscal Year Annual Research Report
イトマキヒトデが関知する天敵ニチリンヒトデの生体成分の研究
Project/Area Number |
10460094
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Research Institution | 東京水産大学 |
Principal Investigator |
浪越 通夫 東京水産大学, 水産学部, 教授 (30189196)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
能登谷 正浩 東京水産大学, 水産学部, 教授 (80208371)
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Keywords | ニチリンヒトデ / イトマキヒトデ / アレロケミカル / カイロモン / 忌避行動 / 肛門排出液 / タンパク質 / 化学生態学 |
Research Abstract |
昨年度までの実験で、イトマキヒトデに忌避行動を誘起するニチリンヒトデ成分は安定性の低い複数のペプチド/たんぱく質と考えられたので、不安定化因子の解明と効率的な分離方法の開発を中心に検討した。安定性は塩濃度によっても影響を受け、濃度が0.1Mより低くなると活性が低下した。最大の活性低下はクロマトグラフィーにより起こる。バッファー溶液を用いて、たんぱく質分離用のゲルろ過カラムで分離を行い、2フラクションに活性を検出したが、活性は著しく低下した。活性フラクションを混合したが、活性の強さは再現できなかった。よって活性物質が担体へ吸着したと考えられる。 イトマキヒトデは4月に採取したニチリンヒトデの肛門排出液に強い忌避行動を示したが、7月に採取した液には活性がなかった。10月の肛門排出液には強い活性があるので、水温上昇による摂餌停止と忌避行動に関係があることが示唆される。同日の朝、昼、夜に採取した肛門排出液の活性には優位な差はなかったので、一日の変化もなく、液を採取し続けても活性物質は排出され続けることもわかった。肛門排出液の遠心分離式限外ろ過により、活性物質の分子量の推定を行ったところ、分子量範囲は10,000〜30,000であった。 冷凍したニチリンヒトデの解凍時に得られる液と肛門排出液の活性を比較したところ、解凍液では安定して非常に強い活性が検出されたが、肛門排出液では採取時間と日時による多少の差が見られた。解凍の際に最初に得られる液は透明度が高いので、爽雑物も少ないと考えられる。この液には主に体腔液が含まれていると思われる。よって、解凍の初期に得られる液も忌避活性物質分離用の出発原料として適していることがわかった。 イトマキヒトデの忌避行動に関与する化学物質の分離は、今後も多大な困難を伴うことが予想される。
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