2001 Fiscal Year Annual Research Report
ハイドローリックリフトの発生条件の解明と作物生育環境改善への応用
Project/Area Number |
10460115
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
櫻谷 哲夫 京都大学, 農学研究科, 教授 (00260612)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
樋口 浩和 京都大学, 農学研究科, 助手 (50303871)
縄田 栄治 京都大学, 農学研究科, 助教授 (30144348)
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Keywords | ハイドローリックリフト / アグロフォレストリー / 蒸散流 / 水分動態 / 陸稲 / 根 / 流量センサー |
Research Abstract |
表層土のみを乾燥できる実験装置により、樹木の表層部の側根が作物の水分状態にどのような影響を与えるのかを調べた。中央に半円状の仕切り板を有する直径1mの容器に土壌を充填してハウス内地面に設置し、容器中央に樹木(Markhamia lutea)を植え樹木の側根側と無根側に陸稲(品種:陸捷)を播種した。陸稲の草丈が十数cmに達した時点で容器への灌水を中止し、その後の両植物の蒸散速度と気孔コンダクタンス(g)をポロメーターで、土壌水分をTDRケーブルテスターで測定した。陸稲のしおれが著しい時には巻き葉率を求めた。同様の実験装置をもうひとつ準備しMarkhamia側根に流量センサーを取り付けて根の水分動態を調べた。 断水2日目では無根側と側根側におけるgと蒸散速度には差はなかったが、6日目になると側根側において両者の低下が見られた。これは樹木と陸稲とで水の競合が生じたためと考えられた。7日目には無根側でもgの低下が始まった。40日目では無根側・側根側ともに葉が巻く現象が見られたが、巻き葉率は側根側が有意に低かった。再灌水直前の土壌容積含水率は側根側で高い傾向が見られた。側根側では枯死せずに生き延び、再灌水後葉のしおれは回復したが、無根側では再灌水後も回復せず枯死した。樹木側根の流量測定は表土の乾燥時、側根で水が逆流することを示した。これらのことから側根側では樹木の根によるハイドローリックリフトによって陸稲に水分が供給されていたものと推測された。本研究によりアグロフォレストリーなど自然条件下でも、表土に密な側根を有する樹木の周辺作物や植生は、強い水ストレスを受けたとしても、樹木がない場合と比べて枯死せず生存し続けられるという可能性が示された。
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