1998 Fiscal Year Annual Research Report
赤血球寄生性原虫集団の分子生態学的研究と生物学的多様性獲得機序の解明
Project/Area Number |
10460126
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
杉本 千尋 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助教授 (90231373)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大橋 和彦 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 助手 (90250498)
小沼 操 北海道大学, 大学院・獣医学研究科, 教授 (70109510)
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Keywords | 原虫 / タイレリア / 分子進化 / リボソームRNA |
Research Abstract |
まず、一宿主内での多種原虫遺伝子の混在を確認するために変性勾配ゲル電気泳動を行った。そこでまずサンプルより18SリボゾームRNA遺伝子をPCRにより増幅し、増幅産物のクローニングを行った後に、各遺伝子クローンから18SリボゾームRNA遺伝子のV4領域を増幅して10-40%ホルムアミド存在下で変性勾配ゲル電気泳動を行った。泳動像を解析した結果、一個体由来試料から移動度の異なるバンドが検出され、これは標的遺伝子の塩基配列の違いを反映しているものと考えられた。この結果、一感染宿主内に異なった原虫種あるいは遺伝的に異なる“株"の混在が一般的であることが明らかにできた。また、同じ試料からピロプラズマ主要蛋白質遺伝子(MPSP)のPCRによる増幅を試みたところ、いくつかの新規MPSP遺伝子が見出された。それらの塩基配列の系統進化学的比較から、タイレリアは大きく3群(良性群、悪性群、中間群)に分けられた。また、タイで分離された良性タイレリア原虫のMPSP遺伝子には、塩基挿入とこれによるフレームシフトが認められ、他の良性群原虫MPSPとは大きく異なる構造を持っていることが明らかになった。今後、系統発生的に近い分類群内での表面抗原遺伝子組換によって、その抗原多様性が生まれてくるのか、MPSP遺伝子の構造を詳細に解析することによって明らかにする必要がある。また、原虫表面抗原に対する宿主の免疫学的な選択を明らかにするために、MPSPのオーバーラップ合成ペプチドを作製し、T細胞のエピトープマッピングを行う。またMPSP型間でのエピトープの差異を検討する計画である。
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