家畜牛類及び近縁野生種のDNA情報による遺伝分化の総合解明と機能遺伝子変異の検索

2000 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 10460144
• Research Institution: NAGOYA UNIVERSITY
• Principal Investigator: 並河 鷹夫 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (70111838)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 石川 明 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (20211724) ; 小澤 智生 名古屋大学, 大学院・理学研究科, 教授 (80037233) ; 山本 義雄 広島大学, 生物生産学部, 教授 (10032103) ; 山縣 高宏 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助手 (50242847)
• Keywords: 牛亜科 / 牛 / 水牛 / ミトコンドリアDNA / 遺伝的分化 / 系統進化 / FISH / 核型

Research Abstract

本研究は、牛亜科の種から地域集団までのレベルで詳細な牛類の遺伝学的類縁関係を解明することにより、遺伝子資源保全への必要な提言をすること、及び、機能遺伝子の基礎的変異と分布を体系的に明らかにし、有用機能遺伝子変異研究の検索・利用基盤を形成することを目的とする。
平成12年度は、特に以下の4点について研究成果を論文として公表した。1)フィリピンのミンドロ島のみに生息する希少野生水牛(タマラオ)、Bubalus mindorensis、と家畜水牛の比較研究を、R-バンド核型、染色体動原体領域のサテライトDNA、テロメア塩基配列及び18S-28SrRNA遺伝子の染色体分布によって行い、タマラオがアジア水牛属の各種から区別される固有種であることを明確にした。2)ベトナムの在来牛集団に、アジアでは初めての染色体変異である、Rob(2;28)ロバートソン型融合染色体を同定し、これがガヤール、Bos gaurus frontalis、のそれと相同であることを示した。3)ヘモグロビン・ベータ鎖変異遺伝子の地理的分布を調べ、タイ、ラオス、ベトナムに比較的高い頻度で存在するX1型がガヤールのそれと相同遺伝子と推定し、この地域の在来牛の起源に複数種の野生牛が関与したことを示唆した。4)タウルス型牛種とインド型牛種を、母系遺伝するミトコンドリアDNAの分析で明確に区別する従来の方法に加えて、Y-染色体上にあるSRY遺伝子を含む領域のRFLP分析によって、両型を容易に区別する方法を確立した。この母系及び父系遺伝をする標識を用いて、ラオスとベトナムの在来牛集団にタウルス型牛種とインド型牛種がどの程度それらの成立過程に遺伝的寄与をしたかを定量した。その結果、母系的、父系的ともにこれらの集団にはインド型牛種の影響が極めて大きいことが判明した。

Research Products

• [Publications] Kazuaki Tanaka: "Cytogenetic analysis of the Tamaraw (Bubalus mindorensis) : A comparison of R-banded karyotype and chromosomal distribution of centromeric satellite DNAs, telomeric sequence, and 18S-28S rRNA genes with domestic water buffaloes."The Journal of Heredity. 91(2). 117-121 (2000)
• [Publications] Kazuaki Tanaka: "A Robertsonian translocation, rob (2;28), found in Vietnamese cattle."Hereditas. 133. 19-23 (2000)
• [Publications] Yoshimura,T.: "Molecular analysis of avian circadian clock genes."Molecular Brain Research. 78. 207-215 (2000)
• [Publications] Yukio Okada: "Comparison of hemoglobin-β chain polymorphisms of the native cattle from Laos, Thailand and Vietnam."Report of Society for Researches on Native Livestock. No.18. 75-82 (2000)
• [Publications] Tomowo Ozawa: "Molecular phylogenetic analysis of the wild boars and native domestic pigs in Laos."Report of Society for Researches on Native Livestock. No.18. 149-158 (2000)
• [Publications] Kazuaki Tanaka: "An assay for paternal gene flow between the Taurus-type and Indicus-type cattle in Laos and Vietnam using variation in SRY gene."Report of Society for Researches on Native Livestock. No.18. 59-64 (2000)