1998 Fiscal Year Annual Research Report
グルタチオンはβ-細胞の機能をどのように制御するか
Project/Area Number |
10470041
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
近藤 宇史 長崎大学, 医学部, 教授 (00158908)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鬼島 宏 東海大学, 医学部, 助手 (90204859)
山下 俊一 長崎大学, 医学部, 教授 (30200679)
赤澤 昭一 長崎大学, 医学部・附属病院, 助教授 (10145261)
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Keywords | グルタチオン / γ-グルタミルシステイン合成酵素 / インスリン / 膵β細胞 |
Research Abstract |
細胞内の還元力にグルタチオン(GSH)は重要な役割を果たしているが、β細胞ではGSH濃度が他の組織細胞に比較して約20%以下に低下している。しかし、なぜβ細胞が低いGSH濃度を保たなければならないのかは不明である。申請者は、GSHを低く維持することが外からの刺激に鋭敏に反応してインスリンを合成分泌させているβ細胞の戦略でないかと予想している。β細胞の機能、即ちインスリンの合成と分泌に及ぼすGSHのレドックス制御機構を明らかにすることは、糖尿病発症予防や治療法の開発にも大きな貢献をすると思われる。 以上の観点より、初年度は以下の3点を具体的な到達目標とした。 (1) β細胞においてGSHを維持する機構を、特にGSH合成の律速酵素、γ-グルタミルシステイン合成酵素(γ-GCS)の遺伝子発現の面から解析する。γ-GCS遺伝子のプロモーター領域をクローニングして、ルシフェラーゼベクターに組み込み、β細胞に導入してγ-GCS遺伝子発現調達の研究を行った。特にγ-GCSプロモーターは、酸化的ストレスに反応するエレメント、AP-1やSP-1の結合部位を有していることが明らかになった。TNF-αやIL-1βなどのサイトカイン刺激に対しては、NF-κBのDNA結合による転写活性が上昇していた。インスリン分泌を引起す高グルコースによってもγ-GCS遺伝子の発現誘導が認められたが、その転写調節領域は検討中である。 (2) γ-GCS heavy subunit(活性中心部位)とlight subunit(安定化部位)の遺伝子をクローニングして、そのアンチセンスcDNAの一部をリボザイムに結合させ、β細胞に導入してGSH合成を低下させる。その条件下で細胞の機能変化を解析する。β細胞に導入したγ-GCS遺伝子は、GSH濃度を約50%低下させ、細胞内還元力を変化させた。この結果インスリン分泌能は上昇し、同時に細胞内にカルシウム濃度上昇も認められた。 (3) スルフォニルウレア剤やグルコースで促進されるインスリン合成と分泌に関与する細胞内情報伝達カスケードを解明する。GSHはプロテインキナーゼCやMAPK活性、更に転写因子の活性化に負の制御を与えると考えられる、β細胞においてそのGSHの役割を明らかにする。GSH負荷によって細胞内情報伝達機構が負の制御を引起すことを明らかにした。このGSHのインスリン合成分泌作用に及ぼす役割を検討中である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] H.Sakamaki,et al.: "Significance of Glutathione-dependent Antioxidant System in Diabetes-induced Embryonic Malformations." Diabetes. (in press). (1998)
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[Publications] S.Cho,et al.: "Glutathione downregulates the phosphorylation of IκB:autoloop regulation of the NF-κB-mediated expression of NF-κB subunits by TNF-α in mouse vascular endothelial cells." Biochem.Biophys.Res.Commun.253. 104-108 (1998)
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[Publications] S.Todoroki,et al.: "High concentration of L-arginine suppresses nitric oxide synthase activity and produces reactive oxygen species in NB9 human neuroblastoma cells." Mol.Med.4. 515-524 (1998)
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[Publications] D.M.Carlos,et al.: "Nicardipine normalizes elevated levels of antioxidant activity in response to xanthine oxidase-induced oxidative stress in hypertensive rat heart." Free Rad.Res.29. 143-150 (1998)
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[Publications] H.Kijima,et al.: "Hammerhead ribozyme against γ-glutamylcysteine synthetase mRNA down-regulate intracellular glutathione concentration of mouse islet cells." Biochem.Biophys.Res.Commun.247. 697-703 (1998)
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[Publications] M.Iwanaga,et al.: "Nuclear factor-kappa B dependent induction of gamma glutamylcysteine synthetase by ionizing radiation in T98G human glioblastoma cells." Free Rad.Biol.Med.24. 1256-1268 (1998)