2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10470047
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
阿部 聰 新潟大学, 脳研究所, 助手 (90202663)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊西 敏郎 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40018601)
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Keywords | 亜急性硬化性全脳炎 / Subacute sclerosing panencephalitis / 潜在感染 / 遺伝子変異 |
Research Abstract |
亜急性硬化性全脳炎Subacute sclerosing panencephalitis(SSPE)は、SSPEウイルスの持続感染による予後不良の脳炎である。SSPEウイルスは麻疹ウイルスが何らかの原因で変異したものと考えられているが、その変異の原因は不明のままである。本研究ではSSPE患者組織におけるウイルス変異の増加の原因を知ることを目的とした。 RT-PCR法によりSSPE剖検例の大脳及びリンパ節組織でSSPEウイルス遺伝子を検出した。6種類のウイルス構成蛋白遺伝子の塩基配列を麻疹ウイルス野性株の塩基配列と比較すると、多数の塩基変異が認められた。その塩基変異の多くは大脳とリンパ節由来のウイルスに共通に見られたが、リンパ節由来のウイルスにはさらに多数の塩基変異が加わっており、患者組織中で塩基変異が増加しつつあることが確認された。 これらの塩基変異は6種類の遺伝子のいずれにおいても80%以上がTransition変異であり、とくにTからCへの塩基置換が多かった。また、塩基変異によるアミノ酸置換が高率であった。追加検索したもう一例においても同様な結果だった。以上の遺伝子変異がSSPEウイルスにのみ認められる特徴であるか否かを見るために、同様に高度の遺伝子変異を示すことが知られている免疫グロブリン遺伝子可変領域をリンパ腫組織において検索し比較検討した。その結果リンパ腫細胞の免疫グロブリン遺伝子にも高率にアミノ酸置換が認められたが、Transition変異は高率ではなく、TからCへの選択的塩基置換も認められず、こうした選択的なTransition変異はSSPEウイルスにのみ見られる特徴であることが示された。また免疫グロブリン可変領域遺伝子には塩基置換によってアミノ酸置換を起こしやすいコドンが集積しており、麻疹ウイルスにも同様のコドンの集積が見られるか否かをウイルス全長にわたって解析したがそうした部位は認められなかった。すなわち、塩基置換による高率のアミノ酸置換は、ウイルス自体の特徴的な配列によるものではなく他の要因によると考えられた。 さらに、こうしたSSPEウイルスにおける遺伝子変異が患者組織中の遺伝子変化によるものか否かを見るために、SSPE患者組織においてRT-PCR法を用いて染色体異常の検索を行った。結果はSSPE患者においては転座などの染色体異常は検索の範囲内では認められず、SSPE患者と健常者に何らかの差異があるとすれば、それは遺伝子発現あるいは蛋白発現レベルの差であろうと推定された。
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[Publications] Abe S: "Intravascular Malignant Lymphomatosis : Immunoglobulin VH and VL Gene Analysis"Brain Pathology. 10・4. 694-695 (2000)
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[Publications] 阿部聡: "Intravascular malignant lymphomatosis : 免疫グロブリン遺伝子をマーカーとした患者末梢血によるフォローアップ"Neuropathology. 20・Supple. 146 (2000)
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[Publications] 阿部聡: "Intravascular malignant lymphomatosis : 免疫グロブリンH鎖およびL鎖遺伝子の検索"Neuropathology. 20・Supple. 147 (2000)
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[Publications] Usui H: "Cloning of a novel murine gene Sfmbt, Scm-related gene containing four mbt domains, structurally belonging to the Polycomb group of genes"Gene. 248・1-2. 127-135 (2000)
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[Publications] Tsumanuma I: "Demonstration of hydroxyindole-O-methyltransferase (HIOMT) mRNA expression in pineal parenchymal tumors : histochemical in situhybridization"Journal of Pineal Research. 28・4. 203-209 (2000)
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[Publications] Ikeda,K: "Involvement of G-protein-activated inwardly rectifying K(GIRK) channels in opioid-induced analgesia"Neuroscience Research. 38・1. 113-116 (2000)