2000 Fiscal Year Annual Research Report
高血糖から細胞傷害機構の研究:糖尿病合併症の成因と予防について
Project/Area Number |
10470054
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
八木橋 操六 弘前大学, 医学部, 教授 (40111231)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山岸 晋一朗 弘前大学, 医学部, 助手 (80301026)
八木橋 法登 弘前大学, 医学部, 講師 (10250622)
黒滝 日出一 弘前大学, 医学部, 助教授 (40215108)
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Keywords | 糖尿病 / 合併症 / トランスジェニックマウス / ポリオール代謝 / アルドース還元酵素 / グリケーション / AGE / 活性酸素 |
Research Abstract |
高血糖から傷害がもたらされる病理学的状況として、糖尿病性合併症が代表的病態としてあげられる。糖尿病では、特徴的に細小血管障害としての網膜症、腎症、末梢神経障害が起こるが、これらに共通して起こる細胞傷害機構として高血糖の結果からの、(1)アルドース還元酵素を介したポリオール代謝の亢進、(2)タンパクの非酵素的糖化およびその最終産物である後期糖化生成物(AGE)の過剰産生が提唱されている。今回の研究では、(1)ポリオール代謝亢進関与の解明には、この代謝系の律速酵素であるヒトアルドース還元酵素(hAR)を大量に発現するトランスジェニックマウス(Tg)を用いて、高血糖状態での末梢神経組織および細小血管での細胞内シグナル異常を明らかにするよう試みた。(2)一方、糖化機構の関与の検索では、精製AGEを作成し正常ラットに投与し、糖尿病類似の細胞傷害が惹起されるかを検討した。その結果、(1)のポリオール代謝亢進状態でhAR高発現に伴い、末梢神経ではprotein kinase C(PKC)活性低下とともにNa,K-ATPase活性の低下を認めた。血管組織に富む神経周膜においてはPKCの低下をみた。すなわち、ARに富む組織でのPKC低下、ARに乏しい組織でのPKC活性上昇の結果が組織傷害機構をもたらすことが考えられた。一方(2)でのAGE作用の検討では、AGE投与ラットにおいて、末梢神経運動神経伝導速度の低下、神経でのNa,K-ATPase低下を認めた。同時にAGE投与ラットでは活性酸素によるDNA傷害の指標とされる80HdGの高度陽性所見を血管内皮細胞、末梢神経シュワン細胞に認めた。これらの結果は、AGEが高血糖の結果からの単なる二次的産物ではなく、糖尿病合併症の発症において成因的意義をもつことを示唆している。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] 八木橋操六: "ボリオール経路と糖尿病合併症"医学のあゆみ. 192・5. 576-582 (2000)
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[Publications] 八木橋操六: "AGEの免疫組織化学による検出とのその局在"臨床検査. 44・3. 263-268 (2000)
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[Publications] 八木橋操六: "糖尿病の発症と合併症の成因の新たな展開"細胞. 32・12. 446-447 (2000)
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[Publications] M Koyama,R Wada,H Mizukami,S Yagihashi et al: "Inhibition of progressive reduction of islet β-cell mass in spontaneously diabetic Goto-Kakizaki rats by a-glucosidase inhibitor"Metabolism. 49・3. 347-352 (2000)
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[Publications] H Kasajima,S Yagihashi et al: "Enhanced expression of aldose reductase in peripheral nerve and glomeruli in diabetic patients"Virchows Arch. 438・5(in press). (2001)
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[Publications] R Wada,Y Nishizawa,S Yagihashi et al: "Effects of OPB-9195,anti-glycation agent,on the experimental diabetic neuropathy in rat."Euro J Clin Invest. 31,6(in press). (2001)
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[Publications] 八木橋操六: "分子糖尿病学の進歩-基礎から臨床まで-2000"矢崎義雄監修 清野進ら編. 9 (2000)
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[Publications] S Yagihashi,S Yamagishi,C Nishimura: "Utility of the Transgenic mouse in Diabetes Research In"Chronic complications in diabetes""AAF Sima Harwood Acad. 26 (2000)