1999 Fiscal Year Annual Research Report
T細胞キメラマウスを用いた広東住血線虫に対する感受性と病態発現の分子免疫学的研究
Project/Area Number |
10470065
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
吉村 堅太郎 秋田大学, 医学部, 教授 (90053058)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
島田 博子 (菅谷 博子) 秋田大学, 医学部, 助手 (30235626)
石田 和人 秋田大学, 医学部, 助手 (60006731)
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Keywords | 広東住血線虫 / 骨髄キメラマウス / T細胞キメラマウス / C.B-17 / C57BL / 6 / 好酸球増多 / 病態 / X線照射 |
Research Abstract |
本年度得られた成果は以下の通りである。1.C.B-17系マウスはBALB/cのコンジェニック系であるにも拘わらず、BALB/cと異なり好酸球産生機構に欠陥があり、そのために髄液好酸球増多が誘導できず、結局、脳内で発育中の広東住血線虫(Angiostrongylus cantonensis,Ac)を殺滅できない。つまり、C.B-17はAcに対してBALB/cよりさらに感受性が高い。2.C.B-17に致死量のX線照射を施した後、C57BL/6(低抗性系統)あるいはC.B-17の骨髄細胞を静脈移入して骨髄キメラマウス(C57BL/6→C.B-17,C.B-17→C.B-17)を作製し、Acに対する感受性や病態を調べた。キメラ状態はH-2typingにより確認した。感染C57BL/6→C.B-17では、20日後に髄液好酸球レベルは60%に達して30日まで持続し、30日後には有意な虫体の殺滅がみられた。また、感染後の体重減少も有意に抑制されており、マウスの生存率は80%であった。一方、C.B-17→C.B-17では骨髄、末梢血、髄液の好酸球増多は著しく軽微で、感染後29日までに全マウスが死亡した。つまり、C.B-17においても骨髄好酸球増多を誘導できれば、髄液に好酸球集積が起こり、脳内虫体の殺滅が可能であること、また、C.B-17の骨髄由来細胞は病態の悪化に関与すること、が判明した。3.BALB/c-nu/nuにX線照射後、抗Thy1.2抗体で処理したBALB/cの骨髄細胞で再構築し、その後にBALB/cあるいはC57BL/6の胸腺細胞を数回移入してT細胞キメラマウスを作製(BALB/cT→nu/nu、C57BL/6T→nu/nu)、Acを感染させた。T細胞構築マウスは対照のnu/nuに比べ髄液好酸球数が多かったが、脳内虫体回収数には差がみられなかった。一方、Ac感染後BALB/cT→nu/nuは明らかな体重減少を示したのに対して、C57BL/6T→nu/nuでは減少が抑制される傾向があり、BALB/cのT細胞が病態発現に関わっている可能性が示唆された。しかし、今回作製されたC57BL/6T→nu/nuの脾リンパ球には、C57BL/6由来のH-2Kb ^+CD4^+リンパ球は1%未満しか認められず、キメラ状態の改善が課題と考えられた。
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[Publications] 吉村 堅太郎: "小児の感染症(II)広東住血線虫症"小児科臨床. 52. 625-627 (1999)
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[Publications] Aoki,M.: "Morbidity and susceptibility of the mouse to Angiostrongylus cantonensis are not to the H-2 complex"Parasitology Research. 85. 699-671 (1999)
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[Publications] Xiaotong,W.: "Clinical significance of the measurement of serum antibody against Angiostrongylus cantonensis by enzyme-linked immunosorbent assay (ELISA)"Chin J Neuroimmunol & Neurol (in Chinese). 6. 128-130 (1999)
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[Publications] Xiaotong,W.: "A clinical research for eosinophilic meningoencephalitis caused by angiostrongyliasis"Chin J Intern Med (in Chinese). 38. 326-328 (1999)
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[Publications] Yoshimura,K.: "SCID mice show a similar susceptibility to Angiostrongylus cantonensis as wild-type mice in C.B-17 strain"Parasitology Research. 86(in press). (2000)
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[Publications] 吉村 堅太郎: "日本における寄生虫学の研究 第6巻"財団法人 目黒寄生虫館. 672 (1999)
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[Publications] 吉村 堅太郎: "感染症予防必携"財団法人 日本公衆衛生協会. 561 (1999)