1998 Fiscal Year Annual Research Report
外因性ホルモン様化学物質の複合汚染による生体影響の総合的アセスメント
Project/Area Number |
10470096
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
槇田 裕之 九州大学, 医学部, 助教授 (30209407)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井上 向英 九州大学, 医学部, 教授 (00131904)
大村 実 九州大学, 医学部, 助手 (50243936)
平田 美由紀 九州大学, 医学部, 助手 (30156674)
田中 昭代 九州大学, 医学部, 講師 (10136484)
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Keywords | 外因性ホルモン様物質 / P,P'-DDE / トリブチルスズ(TBT) / 生体影響 / 複合汚染 / 海産資源 |
Research Abstract |
マグロやカツオの体内には、かって農薬として広く使用されたDDTの代謝物であるp,p′-DDEが、近海物のかれいや貝類には、船底塗料や漁網の汚染防除剤として使用されているトリブチルスズ(TBT)が高濃度に蓄積されていることが明らかにされている。これらの海産資源に含まれる外因性ホルモン様化学物質であるp,p′‐DDEとトリブチルスズによる生体影響を検討するため、6週齢のラットに体重1kgあたり200mgのp,p′-DDEおよび餌に混ぜたトリブチルスズ5mg/kgを与え、24週齢に至るまでその影響を観察した。それぞれの物質の単独影響と複合影響を観察するため、コントロール群、p,p′-DDE単独投与群、トリブチルスズ単独投与群、p,p′-DDEおよびトリブチルスズ複合投与群の4群のグループを設定し、経時的にその影響を観察した。成熟後の個体に与えられたp,p′-DDEやトリブチルスズは、個体の成長および精巣下降や性周期などの性発達過程にはほとんど影響を与えなかった。しかし、p,p′-DDEおよびトリブチルスズ複合投与群において、体重増加がやや鈍化する傾向がみられた。各臓器においては肝臓、腎臓、脾臓などの内臓臓器重量、生殖器である精巣、精巣上体、子宮、卵巣の重量にもコントロール群との間に大きな変化が認められなかった。病理学的には、内臓諸臓器を含め精巣の萎縮や子宮内膜の異常などの所見はなかった。血清テストステロン濃度は、20週齢以降、投与群にて低下し、外因性ホルモン様化学物質の影響が疑われたが、個体間のばらつきがはなはだしく今後再検討する必要がある。外因性ホルモン様物質の生体影響は、暴露を受けた個体(親)そのものよりその次世代(仔)に強く現れることが推定されているので、妊娠動物を用い、妊娠前期より被験物質(TBT,p,p′-DDE)を投与しその次の世代(仔)にどのような影響が現れるのかを検討して行く予定である。
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