2000 Fiscal Year Annual Research Report
難消化吸収性甘味糖質の最小有効量および許容量に関する研究
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10470104
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Research Institution | Siebold University of Nagasaki |
Principal Investigator |
奥 恒行 県立長崎シーボルト大学, 看護栄養学部, 教授 (50010096)
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Keywords | 難消化吸収性甘味糖質 / 糖質の最大無作用量(許容量) / 消化・発酵・吸収 / オリゴ糖・糖アルコール / 難消化吸収性甘味糖質の最小有効量 / 呼気水素ガス / 下痢 |
Research Abstract |
本研究の目的は、甘味糖質を用いた特定保健用食品をはじめ甘味糖質の生理機能を強調した加工食品をどのように摂取すれば、弊害を生じることなく期待する生理作用が効果的に発現して健康づくりに活用できるかを明らかにすることである。このため、食品素材として用いる甘味糖質の一過性下痢に対する最大無作用量(許容量)、腸内環境改善のための最小有効量、甘味糖質の一括摂取と分割摂取、摂取慣れなどの食べ方による許容量の変化、甘味糖質含有食品の単独摂取と組み合わせ摂取による許容量の変化などを明らかにするために研究を進めてきた。本研究課題における研究成果は以下の通りである。すなわち、人を用いた研究によってトレハロース、ラクチュロース、ガラクトシルスクロースの一過性下痢に対する最大無作用量を明らかにし(J Nutr Sci Vitaminol:44:787-798,1998)、また、ガラクトシルスクロースを分割摂取をると、その分割の程度にもよるが1日の許容量が一括摂取時の許容量の2倍程度のなることから、許容量は分割摂取によって増加することを明確にした(栄養・食糧学会誌、52:201-208,1999)。さらに、ラクチトールならびにキシリトールの最大無作用量を測定するとともに、ラクチトール含有チョコレートを1日1箱(56g)10日間摂取させることによって最大無作用量は約1.5倍に増加することを明らかにし、難消化吸収性甘味糖質の摂取慣れによって許容量が有意に高くなることを提示した(発表予定)。このラクチトール含有チョコレートとポリデキストロース含有飲料(120ml)1本との組み合わせ摂取によって下痢を誘発する者が20%以上出現し、難消化吸収性食品の組み合わせ摂取に留意することの必要性を示した(発表予定)。日本人のトレハロース利用性を検討するために、非消化性のラクチュロースを対照にしてトレハロースの最大無作用量から小腸トレハラーゼ活性を検討したところ、日本人に小腸トレハラーゼ活性の高い者と低い者とがおり、トレハラーセ活性の低い者はインスリン分泌刺激が弱いことを明らかにした(Eur J Clin Nutr 54:783-788,2000)。一方、各種難消化吸収性甘味糖質を健常人に摂取させ、投与量と呼気水素ガス排出量の関係ならびにその経時的な変化を詳細に観察して、糖質の消化吸収性と発酵性、大腸への到達時間などを比較・検討してきた。その結果、単糖アルコールであるエリスリトール、キシリトール、ソルビトール摂取時の呼気水素ガス排出量は、小腸からの吸収性を反映してソルビトールで最も多く、次がキシリトールで、摂取量の90%以上が吸収されるエリスリトールはほとんど水素ガスを排出しなかった。また、二糖類アルコールであるマルチトールとラクチトールはソルビトールに比べて呼気水素ガス排出量は明らかに多かった。さらに、ガラクトシルスクロースおよびイソマルトオリゴ糖は腸内細菌叢を改善して大腸内環境を良好な状態に維持する働きがあるとして加工食品に用いられているが、人に摂取させるとガラクトシルスクロースの呼気水素ガス排出量は非消化性のフラクトオリゴ糖に比べて顕著に少なく、イソマルトオリゴ糖に至っては検出限界ぎりぎりで、ガラクトシルスクロースおよびイソマルトオリゴ糖はかなり消化されることが明らかになった。
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[Publications] Tsuneyuki Oku,Sadako Nakamura: "Estimation of intestinal trehalase activity from a laxative threshold of trehalose and lactulose on healthy subjects."European Journal of Clinical Nutrition. 54. 783-788 (2000)
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[Publications] 奥恒行,岡松洋,藤井康弘: "ピーグル犬の便重量および消化管通過時間に及ぼすポリデキストロースの影響"日本食物繊維研究会誌. 4巻1号. 29-35 (2000)
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[Publications] 奥恒行,中村禎子: "低分子化アルギン酸ナトリウム含有コーンポタジュの便重量ならびに便性状の改善効果"Progress in Medicine. 20巻10号. 2063-2071 (2000)