1998 Fiscal Year Annual Research Report
ディーゼル排気ガスによる精子産生能力低下とその作用メカニズムの解明に関する研究
Project/Area Number |
10470117
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
嵯峨井 勝 国立環境研究所, 地域環境研究グループ・大気影響評価研究チーム, 総合研究官 (80124345)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 健 東京理科大学, 薬学部, 教授
宮原 裕一 国立環境研究所, 環境健康部・疫学研究室, 研究員 (80311330)
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Keywords | ディーゼル排気(DE) / ディーゼル排気微粒子(DEP) / 精子産生能力低下 / ライディツヒ細胞 / セルトリ細胞 / 男性ホルモン / LH受容態mRNA / 黄体刺激ホルモン(LH)の受容体 |
Research Abstract |
本年度は以下の3点について検討した 1) ディーゼル排気の精子形成過程に及ぼす影響: マウスにディーゼル排気微粒子(DEP) 濃度として、1時間平均値として0.3.1.0及び3.0mg/m^3の濃度のディーゼル排気(DE)を1日12時間ずつ、l,3及び6ヶ月間吸入させた。(その、為、日平均値)0.15.0.5及び1.5mg/m^3となり、大都市部では日常的に発生するレベルである)。その結果、1ヶ月目では精子産生能力にあまり違いは見られず、3ヶ月目では若干の増加傾向を示した。しかし、6ヶ月目になると0.3,1.0および3,g/m^3群では精子産生能が各々29%.36%及び53%の有為な低下をきたした。 2) ディーゼル排気(DE)のマウスの精巣の組織形態に及ぼす影響: DEに6ヶ月間暴露したマウスの精巣を光学顕微鏡と電子顕微鏡で形態観察したところ、間質性水腫が認められると共に、精巣のライディツヒ細胞の損傷と精細管の退行性変化が認められた。一方、精子形成の場であるセルトリ細胞に変化は認められなかったことより、ライディッヒ細胞のテストステロン合成能力が低下していることが示唆された。 3) ライディツヒ細胞の黄体刺激ホルモン(LH)受容体のmRNAレベルの検討: ライディツヒ細胞傷害の生化学的事実を調べる為、黄体刺激ホルモン(LH)の受容体mRNAレベルの変化を調べたところ、正常動物の1/5以下に低下していた。 これらの事実から、ディーゼル排気の精子産生能の低下は、DEP中のいずれかの成分が精巣のライディツヒ細胞に損傷を及ぼし、精子の産生と成長に必須な男性ホルモンの合成か、ホルモンの機能発現傷害かを起こしているものと考えられる。
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