1998 Fiscal Year Annual Research Report
ミトコンドリアβ酸化異常症の生化学的評価・診断および病因解析に関する研究
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10470178
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Shimane Medical University |
Principal Investigator |
山口 清次 島根医科大学, 医学部, 教授 (60144044)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近藤 直実 岐阜大学, 医学部, 教授 (50124714)
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Keywords | 脂肪酸β酸化 / 先天代謝異常 / 分子生物学 / 質量分析 / 脂肪酸代謝異常 |
Research Abstract |
今年度以下の研究を行った. (1) わが国のミトコンドリアβ酸化異常症(β酸化異常症)患者の実態調査:β酸化異常症は1980年代中頃から欧米を中心に注目されはじめた.わが国ではまだ関心が低いので、β酸化異常症の診断体制を作る第1ステップとして1985年から1997年における患者調査を行い報告した.調査した44例のうちカルニチンパルミトイルトランスフェラーゼ(CPT)欠損症2型が14例と最も多く、次いでグルタル酸尿症2型12例であった. (2) 酵素診断法の確立:関連する代謝酵素のうち、皮膚線維芽細胞を用いてケトン体代謝酵素、アシル-CoA脱水素酵素、エノイル-CoAヒドラターゼ、3-OH-アシル-CoA脱水素酵素の測定系を確立した.またチオラーゼ、アシル-CoA脱水素酵素(極長鎖脂肪酸アシル-CoA脱水素酵素、中鎖脂肪酸アシル-CoA脱水素酵素、3頭酵素、電子伝達フラビンタンパク)に関しては、免疫生化学的方法(イムノブロット、パルスラベルなど)で検索できる体制を作った. (3) 遺伝子解析:わが国のグルタル酸尿症2型患者の1例について電子伝達フラビンタンパク(ETF)の遺伝子解析を行った.その結果わが国では初めてのETFαサブユニット欠損症を見い出した. (4) 新しい患者の診断:21才の成人例の極長鎖脂肪酸アシル-CoA脱水素酵素欠損症を、GC/MSによる有機酸分析、血液ろ紙によるアシルカルニチン分析、皮膚線維芽細胞を用いた酵素活性、イムノタイトレーション、イムノブロット、パルスラベリングによって診断し、成人の中にもβ酸化異常症が存在することを示した. (5) 次年度への課題:生化学診断法としてアシルグリシン分析法の確立.血中脂肪酸分析系の確立.新たに診断した患者の遺伝子解析を進める.
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Research Products
(16 results)
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[Publications] Watanabe H: "Practical assay method of cytosolic acetoacetyl-CoA thiolase by rapid release of cytosolic enzymes from cultured lymphocytes using digitonin." Tohok J exp Med. 184. 29-38 (1998)
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[Publications] Sasaki M: "3-Hydroxyisobutyric aciduria in two brothers." Pediatr Neurol. 18. 253-255 (1998)
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[Publications] Fukao T: "Characterization of N93S,I312T,A333P misssense mutations in two Japanese fa,ilies with mitochondrial acetoacetyl-CoA thiolase deficiency" Human Mutation. 12. 245-254 (1998)
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[Publications] Ikeda H: "Novel mutations of the glutaryl-CoA dehydrogenase gene in two Japanese patients with glutaric aciduria type I" Am J Med Genet. 80. 327-329 (1998)
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[Publications] Souri M: "Relationship between structure and substrate-chain-length specificity of mitochondrial very-long-chain acyl-coenzyme A dehydrogenase" Eur J Biochem. 257. 592-598 (1998)
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[Publications] 山口清次: "有機酸代謝異常:概論" 日本臨床、別冊. 18. 261-266 (1998)
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[Publications] 山口清次: "グルタル酸尿症2型" 日本臨床、別冊. 18. 362-365 (1998)
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[Publications] 山口清次: "極長鎖(および長鎖)脂肪酸アシル-CoA脱水素酵素欠損症" 日本臨床、別冊. 18. 407-410 (1998)
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[Publications] 木村正彦: "2,4-ジエノイル-CoAレダクターゼ欠損症" 日本臨床、別冊. 18. 411-413 (1998)
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[Publications] 木村正彦: "中鎖脂肪酸アシル-CoA脱水素酵素欠損症" 日本臨床、別冊. 18. 414-416 (1998)
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[Publications] 井上真: "短鎖脂肪酸アシル-CoA脱水素酵素欠損症" 日本臨床、別冊. 18. 417-419 (1998)
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[Publications] 田草雄一: "短鎖3-ヒドロキシアシル-CoA脱水素酵素欠損症" 日本臨床、別冊. 18. 420-421 (1998)
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[Publications] 田草雄一: "3頭酵素欠損症" 日本臨床、別冊. 18. 422-425 (1998)
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[Publications] 井上真: "わが国におけるミトコンドリア脂肪酸β酸化異常症の実態" 日本小児科学会雑誌. 102. 753-758 (1998)
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[Publications] 岡部貴裕: "重症乳児湿疹様皮疹、頑固な下痢を契機に発見されたホロカルボキシラーゼ合成酵素欠損症の1例" 日本小児科学会雑誌. 102. 796-801 (1998)
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[Publications] 山口清次: "乳幼児に突然死をきたす先天代謝異常:そのアプローチ" 小児内科. 30. 499-504 (1998)