1999 Fiscal Year Annual Research Report
肥満症発症に関わる中枢性制御系因子の解明とその治療的応用への試策
Project/Area Number |
10470233
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Research Institution | 大分医科大学 |
Principal Investigator |
坂田 利家 大分医科大学, 医学部, 教授 (50037420)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
浜口 和之 大分医科大学, 医学部, 講師 (60180931)
吉松 博信 大分医科大学, 医学部, 助教授 (00166993)
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Keywords | 肥満糖尿病 / 神経ヒスタミン / agouti related ptotain / 高インスリン血症 / Zucker fatty rat / Yellow Ay mice / MC4-R / uncoupling protain |
Research Abstract |
肥満糖尿病発症に関わる中枢性制御因子を解明するために本年度は以下の実験をおこなった。 1.糖尿病におけるagouti related protein(Agrp)の動態と機能。1)storeptozotocin(STZ)誘発性の糖尿病状態では血中レプチンが低下し、視床下部Agrp mRNA発現が増加することを昨年度明らかにした。このAgrp発現増加反応はインスリンの補充では部分的にしか改善しないが、レプチンの脳内慢性投与により完全に改善した。2)STZ誘発性糖尿病ラットの視床下部弓状核(Arc)をmonosodium glutamateを用いて化学的に破壊すると、ラットの生存率が減少した。3)肥満糖尿病を示すobese yellow miceをSTZで処理してもAgrpの増加が認めら、それにともない摂食量が増加した。以上より、STZ糖尿病状態におけるAgrpの増加には血中レプチンの低下が関与しており、増加したAgrpは過食行動を誘発していると考えられる。Agrpの産生部位であるArcの破壊によって糖尿病ラットの死亡率が増大することから、糖尿病下で増加するAgrpやneuropeptideYなどArc由来の神経ペプチドが生命維持に重要な生理機能を発揮していることが考えられる。obese yellow miceの肥満糖尿病の発症は異所性に視床下部に産出されたagouti proteinが視床下部melanocortine4-receptorにantagonistとして作動することによる。同マウスのSTZ投与によるAgrpの増加はレプチンの低下による。しかし、Agrp増加にともなう過食については、1)AgrpがMC4-Rに対しagouti proteinにadditionalに作動する可能性、2)Agrpがagouti protein MC4-R系にindependentに摂食行動へ影響する可能性、3)Agrp以外の摂食促進物質が動員される可能性、などが考えられ今後の課題となった。2.レプチン脳内投与による抗糖尿病作用。レプチンの脳内慢性投与が末梢インスリン作用と独立して糖尿病の改善に有効であることを昨年度報告した。本年度はその改善メカニズムについて検討した、その結果、レプチンは1)脳内投与量と同量の末梢投与では糖尿病改善に効果がないこと、2)レプチンの摂食抑制作用とはindependentに血糖値を改善させること、3)インスリン欠乏下で増加する肝臓のグルコース放出を抑制すること、4)糖尿病状態下で低下する褐色脂肪組織のglucose transporter4(GLUT4)およびuncoupling protein1(UCP1)の発現を改善すること、などが判明した。以上よりレプチンの抗糖尿病作用は中枢神経レベルで発動され、自律神経系を介して末梢の糖代謝に影響することで発揮されることが示唆された。レプチンの下流で機能している神経ヒスタミンやMC4-R系の抗糖尿病作用について現在解析中である。3.肥満糖尿病におけるUCP familyの機能と中枢性制御。本年度は脳に特異的に発現するUCP familyであるBNCP1のクローニングをラットで行った。脳内BNCP1mRNAは絶食負荷やインスリン誘発性低血糖により発現が低下したが、肥満モデルであるZucker fatty ratでは変化がなかった。また加齢にともなう発現の増加が観察された。エネルギー欠乏状態におけるBNCP1の減少は脳のエネルギー代謝の恒常性維持に寄与していると考えられる。末梢UCPおよび脂肪代謝の中枢性調節機構については現在ヒスタミンH_1受容体欠損マウスを用いて解析中である。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Yoshimatsu H,et al.: "Hypothalamic neuronal histamine as a target of leptin in feeding behavior"Diabetes. 48. 2286-2291 (1999)
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[Publications] Masaki T,et al.: "Up-regulation of uterine UCP2 and UCP3 in pregnant rats"BBA. 1440. 81-85 (1999)
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[Publications] Hidaka S,et al.: "Streptozotocin treatment upregulat Yoshimatsu H,et ales uncoupling protein 3 expression in the rat heart"Diabetes. 48. 430-435 (1999)
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[Publications] Kang M,et al.: "Prostaglandin E2 mediates activation of hypothalamic histamine by interleukin-1 βin rats"Proc Exp Biol Med. 220. 88-93 (1999)
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[Publications] Masaki T,et al.: "Induction of rat uncoupling protein-2 gene treated with tumour necrosis factor alpha in vivo"Eur j Clin Invest. 29. 76-82 (1999)
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[Publications] Masaki T,et al.: "Tumor necrosis factor-α regulates in vivo expression of the rat UCP family differentially"BBA. 1436. 585-592 (1999)
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[Publications] Sakata T,et al.: "Control Mechanisms of Stress and Emotion:Neuroendocrine-Based Studies."Eds.by Yamashita H,Funder JW,Verbails JG,Ueta Y,Endo Y,Elsevier. 359 (1999)
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[Publications] Sakata T,et al.: "Progress in Obesity Research 1998"Eds.by B.Guy-Grand and G.Aihoud,Jhon Libbey. 679 (1999)