1998 Fiscal Year Annual Research Report
エネルギー代謝調節と糖脂質代謝調節の連関に関する研究
Project/Area Number |
10470235
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Research Institute for Production Development |
Principal Investigator |
井上 元 財団法人生産開発科学研究所, 研究員 (20260606)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
細田 公則 京都大学, 人間環境学研究科, 助手 (40271598)
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Keywords | エネルギー代謝 / 糖脂質代謝 / インスリン作用 / レプチン / 肥満 / 糖尿病 |
Research Abstract |
1.レプチン過剰発現マウスと遺伝性肥満糖尿病モデル動物であるKKA^yマウスを交配させ、レプチン過剰発現KKA^yマウスを作製した。そのマウスでは、摂食は抑制されず、肥満の発症は抑制できなかったが、糖尿病の発症時期がレプチン過剰発現でないものに比べ、遅延していた。6週齢のマウスではKKA^yマウスでは著明な高インスリン血症が認められ、一方、レプチン過剰発現KKA^yマウスでは高インスリン血症は認めなかった。従って、レプチンは、抗糖尿病発症作用を持つと考えられた。 2.正常マウスに全身および脳室内にレプチン投与した場合およびレプチン過剰発現マウスの肝臓および筋肉において、インスリンによるIRSl結合PI3キナーゼの活性化は冗進していることを見いだした。インスリンによるインスリン受容体、IRSlのチロシンリン酸化は軽度冗進していたが、インスリンによるAktの活性化には差異は検出されず、レプチンのインスリンシグナルに及ぼす影響の多様性が示唆された。レプチンがインスリンシグナル伝達に及ぼす作用機構については現在も解析中である。また、レプチン過剰発現マウスにおいてインスリンシグナルの構成分子の変化を検索し、検索した殆どの分子においてその蛋白量に有意な変化は認められなかった。従って、レプチン過剰発現マウスにおいてレプチンは、他の細胞内シグナル伝達系を介してインスリンシグナルを冗進させることが示唆された。3.UCP3の過剰発現マウスも作製しており、現在解析中である。今後、この動物を用いてエネルギー消費冗進のエネルギー代謝全体におよぼす影響や糖脂質代謝に対する効果についての検討を行う予定である。
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[Publications] Gen Inoue: "Dynamics of Insulin Signaling in 3T3-L1 Adipocytes:Differential Compartmentalization and Trafficking of IRS-1 and IRS-2." J.Biol.Chem.273. 11548-11555 (1998)
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[Publications] Junichi Matsuda: "Increased adipose expression of the uncoupling protein-3 gene by thiazolidinediones in Wistar fatty rats and in cultured adipocytes." Diabetes. 47. 1809-1814 (1998)
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[Publications] Tokuji Tnaka: "Down-regulation of peroxisome proliferator-activated receptor γ expression by inflammatory cytokines and its reversal by thiazolidinediones." Diabetologia. in press. (1999)
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[Publications] 井上 元: "インスリンによる糖輸送促進機構" 専門医のための糖尿病レビュー'98-最新主要文献と解説-. 49-56 (1998)
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[Publications] 井上 元: "エネルギー代謝調節機構" 最新医学 10月増刊号 臨床遺伝学'98. 第53巻. 203-212 (1998)
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[Publications] 益崎裕章: "レプチン過剰発現トランスジェニックマウスの作製と糖代謝調節におけるレプチンの意義" 日本肥満学会誌 肥満研究. 第4巻第4号. 15-20 (1998)
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[Publications] 益崎裕章: "成人病を解く遺伝子-肥満(レプチンを中心に)-" 診断と治療. 86. 2023-2030 (1998)
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[Publications] 益崎裕章: "肥満の分子病態-エネルギー代謝調節の新しい分子医学-" Cardiac Practice. 9(4). 29-35 (1998)
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[Publications] 益崎裕章: "レプチン過剰発現モデルとその病態" バイオクリニカ. 13(12). 24-28 (1998)
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[Publications] 松田淳一: "骨格筋と褐色脂肪組織に高発現するラット脱共役蛋白質cDNAのクローニングと遺伝子発現の検討" 日本肥満学会誌 肥満研究. 4(3). 31-35 (1998)
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[Publications] 小川佳宏: "レプチンの糖代謝調節作用 レプチン過剰発現トランスジェニックマウスより得られた知見" Diabetes Frontier. 9(6). 748-751 (1998)
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[Publications] 細田公則: "脱共役タンパク質ファミリーの分子機構とエネルギー代謝における臨床的意義" 最新医学. 54. 67-74 (1999)