1998 Fiscal Year Annual Research Report
ハイブリッド型リポソームベクターを用いて膵癌切除後の遺伝子療法の確
Project/Area Number |
10470251
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小針 雅男 東北大学, 医学部, 助教授 (30170369)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渋谷 和彦 東北大学, 医学部 (70260429)
古川 徹 東北大学, 医学部, 助手 (30282122)
砂村 眞琴 東北大学, 医学部・附属病院, 助手 (10201584)
武田 和憲 東北大学, 医学部, 講師 (20171639)
松野 正紀 東北大学, 医学部, 教授 (80004737)
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Keywords | 膵癌 / 遺伝子治療 / 変異型アデノウィルスベクター / 5FU / UPRT遺伝子 |
Research Abstract |
膵癌の治療成績はきわめて不良である。このため外科治療と組み合わせた術中放射線照射や動注化学療法などの各種集学的治療が試みられている。化学療法においても標準的なプロトコールは確立されておらず5-fluorouracil(5FU)に比較的良好な成績が認められている程度である。今回我々は、この5FU代謝経路を活性化させる大腸菌由来のpyrimidine salvage酵素のUracil Phosphoribosyltransferase遺伝子(UPRT遺伝子)に着目し、これを用いた自殺遺伝子療法の効果を検討した。UPRT遺伝子の導入方法として自己増殖能力を欠失した組み替えアデノウィルスを用いた。また、正常組織では増殖できないが、腫瘍細胞では増殖可能な変異アデノウイルスを応用し、UPRT遺伝子治療の抗腫瘍効果を飛躍的に改善させることを目的とし、この変異アデノウイルスにUPRT遺伝子を組み込んだ新たな変異ウィルスを作製した。 3つの膵癌細胞株(PANC-1、AsPC-1、PK-1)を用いて上記遺伝子及びアデノウイルスベクターの効果を検討したところ5-FU感受性が顕著に増加することが3つの膵癌細胞株で確認された。p53のpoint mutationを検出したPANC-1では、変異アデノウィルスを単独で感染させた場合、細胞増殖抑制効果を認め、更にこの変異アデノウィルスを用いてUPRT遺伝子を導入した際には、5-FU感受性が増加し、さらに殺細胞効果が増強されることが明らかとなった。すなわち5-HUに抵抗性を持つ細胞株においてもUPRT遺伝子導入により、有効な代謝経路が確保されるため5-FU感受性を高めることが可能である。今回の実験で示されたように膵癌においても5-FUの感受性を増強させることが可能であった。また、UPRT遺伝子導入によって増加した5FUの殺細胞効果が、UPRT遺伝子を組み込んだ変異アデノウィルスを用いることによりさらに増強された。 UPRT遺伝子を組み込んだ変異アデノウィルスを用いる遺伝子治療は、今後の有効な治療方法の一つとなる可能性が示された。
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