1999 Fiscal Year Annual Research Report
摘出保存肺の内皮細胞傷害における接着分子・細胞骨格・シグナル伝達経路に関する研究
Project/Area Number |
10470268
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
谷田 達男 東北大学, 加齢医学研究所, 助手 (20217144)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
藤村 重文 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (40006078)
小野 貞文 東北大学, 加齢医学研究所, 助手 (80250827)
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Keywords | 内皮細胞 / 接着分子 / 細胞骨格 / シグナル伝達回路 / ICAM-1 / PECAM |
Research Abstract |
平成11年度はラット摘出還流肺を用い濾過係数の測定を行った。濾過係数は、肺血管の透過性の指標であり、上昇すれば透過性が亢進(肺傷害・肺水腫)したことを示す。これら一連の研究は肺移植の際の急性・亜急性拒絶反応の病態を検討する際に有効である。本年度は、摘出肺のみにおいても血管内皮細胞のprotein kinase C(PKC)を活性化させることによって肺血管の濾過係数は上昇することを示した。このことは、これまで肺傷害においては重要とされていた好中球が存在しない条件下でも、肺傷害と同様の血管透過性の上昇が見られることがわかった。即ち、肺血管内皮細胞自体がさまざまな刺激によって変形等を生じ、細胞間の結合状況に変化を来たすことが示唆された。PKCの活性化がラット肺血管内皮細胞に直接及ぼす影響を検討するために、ラット肺微小血管内皮細胞(rat lung microvascular endothelial cells;RLMEC)を分離培養し、細胞層の表裏間の電気抵抗の変化を測定した。PKCを活性化させるためにPMA(phorbol 12-myristate 13-acetate)を投与すると細胞層間の電気抵抗は減少(透過性が上昇)することがわかった。この際にファロイジンを用いて細胞骨格のアクチンを染色すると、その重合が抑制されていることが示唆された。このことは、諸刺激が細胞内の信号伝達経路を活性化し、細胞骨格のアクチンの形態をコントロールすることによって細胞間結合を変化させ、ひいては血管透過性を亢進させると考えられた。 平成12年度は血管内皮細胞層の電気抵抗を変化させる刺激(例えば高浸透圧刺激)を用いて細胞内の信号伝達経路をさらに詳しく検討する。また、アクチンの重合の程度を画像解析できるようにシステムを構築する予定である。
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[Publications] 谷田達男: "好中球の接着による肺血管透過性亢進に血管内皮細胞の protein kinase C が関与する"日本呼吸器学会雑誌. 37・3. 183-189 (1999)
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[Publications] 谷田達男: "好中球の接着による肺血管透過性亢進における protein kinase C が関与"脈管学. 39・11. 771-777 (1999)
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[Publications] Tanita T.: "Superoxide anion mediates pulmonary vascular permeability caused by neutrophils in cardiopulmonary bypass"Surgery Today. 29・8. 755-761 (1999)
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[Publications] Tanita T.: "Stimulated neutrophils evoke signal transduction to increase vascular permeability in rat lungs"Tohoku J Exp Med. 189・3. 213-215 (1999)