2000 Fiscal Year Annual Research Report
阻害物質に拮抗する人工肺サーファクタントの開発:多糖類添加と蛋白質調整の検討
Project/Area Number |
10470316
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
小林 勉 金沢大学, 医学部, 教授 (40019922)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田代 勝己 金沢大学, 医学部・附属病院, 講師 (30242556)
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Keywords | 呼吸窮迫症候群 / サーファクタント / デキストラン / 胎便吸入症候群 / 血清蛋白質 / 表面活性 / 酸素化能 / 呼吸機能 |
Research Abstract |
(1)胎便による不活化したサーファクタントに対するデキストランの効果:胎便吸入症候群は、新生児に発生する急性呼吸窮迫症候群(ARDS)の一種である。胎便によって障害された肺サーファクタントの表面活性が、デキストラン(多糖類)を添加すると濃度依存性に回復することを見い出した。この結果から、胎便吸入症候群の治療に多糖類を応用できる可能性が示唆された。 (2)サーファクタントとデキストランを併用した治療法の効果:ARDSのラットにサーファクタントのエアロゾル吸入療法を30分間行うと、肺の血液酸素化能(PaO_2/FiO_2)は65mmHgから377mmHgに改善した。しかし、この療法を中止すると、PaO_2/FiO_2はすぐさま低下し始め、3時間後には85mmHg以下になった。一方、上記の療法に引き続いてデキストラン(分子量=40kDa)のエアロゾル吸入を15分間行うと、PaO_2/FiO_2は低下せず、3時間後でも328mmHgの値を維持した。この結果から、多糖類の添加は、生体内でもサーファクタントの機能を改善すると判定された。 (3)サーファクタント蛋白C(SP-C)の分子構造と生理学的機能の検索:SP-Cのパルミチン側鎖は、サーファクタントが生理学的機能を発揮するために不可欠な因子であることをウサギ胎仔の換気実験で証明した。この結果から、ARDSを治療するための人工サーファクタントの開発には、側鎖の機能を解明することと、側鎖の付加方法を検討する必要がると結論された。 (4)その他:プロポフォール(静脈麻酔薬)により炎症反応が抑制されること、血清に汚染されて不活化したサーファクタントの機能が終末呼気陽圧により改善することなどを見い出した。
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Research Products
(11 results)
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[Publications] Kobayashi,Tsutomu: "Restoration of plasma protein-deteriorated surfactant function : application of polysaccharides"Applied Cardiopulmonary Pathophysiology. 9・3. 260-262 (2000)
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[Publications] Tashiro,Katsumi: "Dextran reduces surfactant inhibition by meconium"Acta Paediatrica. 89・12. 1439-1445 (2000)
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[Publications] Taniguchi,Takumi: "Effect of lidocaine administration on hemodynamics and cytokine responses to endotoxemia in rabbits."Critical Care Medicine. 28・3. 755-759 (2000)
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[Publications] Taniguchi,Takumi: "Effects of propofol on hemodynamic and inflamatory responses to endotoxemia in rats"Critical Care Medicine. 28・4. 1101-1106 (2000)
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[Publications] Kobayashi,Tsutomu: "Experimental models of acute respiratory distress syndrome ; clinical relevance and response to surfactant therapy"Biology of the Neonate. 77(in press). (2001)
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[Publications] Tashiro,Katsumi: "Aerosolized surfactant therapy at various duration for acute lung injury caused by intratracheal endotoxin in rats"British Journal of Anaesthesia. 86(in press). (2001)
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[Publications] 太田圭亮: "肺サーファクタント蛋白Cの分子構造と生理学的機能の関係:再構築物質による検討"金沢大学十全医学会誌. 109・2. 116-124 (2000)
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[Publications] 鈴木康弘: "肺II型上皮細胞への脂質および蛋白症患者SP-Cの結合・取り込みにおける乖離"日本界面医学会誌. 31・1. 17-25 (2000)
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[Publications] 紺崎友晴: "血清によって阻害されたサーファクタントの活性に対するデキストランの効果:気泡拍動法と肺洗浄ラットによる評価"日本界面医学会誌. 31・1. 49-56 (2000)
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[Publications] 徐咏梅: "血清と終末呼気陽圧による加工天然サーファクタントの機能変化"日本界面医学会誌. 31・1. 57-65 (2000)
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[Publications] 加畑千春: "肺サーファクタントの機能におよぼす血清と終末呼気陽圧換気の影響"金沢大学十全医学会誌. 110・1. 77-86 (2001)