1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10470353
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
古川 仭 金沢大学, 医学部, 教授 (40092803)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
竹下 元 金沢大学, 医学部・附属病院, 助手 (40272976)
吉崎 智一 金沢大学, 医学部・附属病院, 助手 (70262582)
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Keywords | 上咽頭癌 / EBウイルス / 遺伝子治療 / BZLF^1 / p53 |
Research Abstract |
EBVの前早期蛋白であるZ蛋白を発現するBZLF1遺伝子は潜伏感染からウイルス複製にスイッチする遺伝子であるが、EBウイルス関連上咽頭癌NPCでの発現はNPC56例中、わずか30%と低く、lyitic感染を示す早期蛋白であるBHLF蛋白の発現はさらに低く10%以下であったことから、NPCではZ蛋白の機能が抑制されていることが判明した。さらに、アポトーシス抑制遺伝子であるbcl-2はEBVのLMP1により転写が活性化されるが、p53蛋白によりその転写活性化が抑制されることが示された。そこでNPCの遺伝子治療の可能性を探るために基礎的実験をおこなった。得られた結果は次のように要約出来る。 1. 放射線治療中のNPC患者からの生検材料を用いてZ、p53、bcl-2の発現の程度とアポトーシスの頻度について定期的に免疫組織化学的に調べた。放射線照射はZの発現増強と、p53、bcl-2の発現抑制に働いた。p53の発現抑制は放射線による正常p53(半減期の短いwild type)への変化と考えられた。 2. NPCモデル細胞を用いて、EBウイルス潜伏感染からウイルス複製にスイッチするBZLF1遺伝子と、癌抑制遺伝子であるp53を高率に発現させることによって、癌細胞におけるウイルス増殖(cell lytic)細胞と、アポトーシス細胞の誘導が観察された。 3. 現在、Z蛋白とp53蛋白を同時発現させる最も効果的方法をNPCモデル細胞移植実験腫瘍を用いて、BZLF1遺伝子導入効果や、薬剤による効果から検討中である。 4. 最近の研究で、Zタンパク(Z)とRタンパク(R)のキメラタンパクRAZがZとRの不活化に関与し、EBVの潜伏感染維持に働いていることも判明したので、RAZ発現プラスミドからアンチセンスDNAを用いた遺伝子治療の可能性も浮上してきた。そこで今後は、RAZ発現プラスミドからアンチセンスDNAを作製し、それによる抗腫瘍効果も検討する。
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Research Products
(10 results)
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[Publications] 古川 仭他: "上咽頭癌の転移機序" 耳鼻臨床. 91(8). 765-771 (1998)
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[Publications] T.Yoshizaki,et al: "The expression of matrix metallo proteinase 9 is enhanced by Epstein-Barr virus latent membrane protein 1." Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 95. 3621-3626 (1998)
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[Publications] 三輪 泰子: "Epstein-Barrウイルス前早期抗原定量法の確立と臨床的意義" 金沢大学十全医学会雑誌. 107(1). 55-63 (1998)
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[Publications] 古川 仭他: "上咽頭癌発癌とEBウイルス。ウイルス複製遺伝子に対する血清学的研究から" JOHNS. 14(11). 1625-1629 (1998)
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[Publications] 吉崎 智一他: "上咽頭癌転移とcollagenase,血管新生,LMP1との関連" JOHNS. 14(11). 1631-1634 (1998)
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[Publications] S.C.S Key, et al: "The Epstein-Barr virus (EBV) SM protein enhances.Pre-m RNA processing of the EBV DNA palymerase tranocript." J.of Virology. 72(11). 8485-8492 (1998)
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[Publications] 古川 仭: "耳鼻咽喉科領域の分子生物学、分子遺伝子学。EBウイルスと細胞遺伝子" 日本耳鼻咽喉科学会会報. 101(3). 328-331 (1998)
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[Publications] M.Furukawa 他: "Detection of Epstein-Barr virus.gene products,p53 and bcl-2 protein in non-endemic nasopharyngeal carcinoma." Monograph on Cancer Research. 45. 109-116 (1998)
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[Publications] 竹下 元 他: "上咽頭癌において各種抗体面を測定する意味は何か、特に早期発現EBV遺伝子群について" 耳鼻咽頭科・頭頸部外科 クリニカトレンド・パート2. 182 (1998)
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[Publications] 古川 仭他: "上咽頭癌" 口腔咽頭の臨床. 140-143 (1998)