1999 Fiscal Year Annual Research Report
頭頸部癌に対する分子生物学的アプローチと臨床への応用
Project/Area Number |
10470359
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
山中 昇 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (10136963)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
與田 順一 和歌山県立医科大学, 医学部, 助手 (10230822)
斉藤 匡人 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (80205658)
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Keywords | 頭頸部癌 / 転移 / E-カドヘリン / 血管新生因子 / VEGF |
Research Abstract |
1)腫瘍細胞浸潤能に及ぼすカドヘリンの影響と基底膜浸潤機序の解析 抗カドヘリン抗体を用いて癌細胞のカドヘリン機能を抑制した場合の癌細胞の形態学的変化および基底膜浸潤能の変化を検索した。 方法:当教室にて樹立した頭頸部癌細胞株を抗カドヘリン抗体によりカドヘリン陽性群と陰性群に分類し、これらの細胞株の抗カドヘリン抗体処理による形態学的変化を検索し、さらに浸潤能の変化を再構成基底膜モデルシステムで検索した。 成績:頭頸部悪性腫瘍細胞株におけるE-カドヘリンの発現は5株中3株に認められた。抗カドヘリン抗体処理による細胞の形態学的変化は、E-カドヘリン発現細胞2株で認められた。すなわち敷石状に付着した細胞は抗体の処理後浮遊した。しかしこの変化はE-カドヘリン陰性細胞では認められなかった。E-カドヘリン陽性細胞株を抗カドヘリン抗体で処理すると、基底膜浸潤細胞の増加が認められたが、陰性細胞株では抗体処理後も浸潤能の変化は認められなかった。 2)頭頸部扁平上皮癌における血管新生に関する研究 腫瘍細胞の血管内皮細胞に対する増殖作用および産生される血管新生因子について検討した。 方法:ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)を用いて、腫瘍細胞培養上清のHUVECに対する増殖作用を検討した。さらに培養上清中の血管新生因子について、IL-1αおよびVEGFについてELISAによって測定した。 成績:腫瘍細胞の培養上清はHUVECに対して増殖作用を示し、腫瘍細胞を抗カドヘリン抗体で処理した場合にはその増殖作用が有意に増大された。さらにIn vIvoで血管新生についてヌードマウス背部皮下法によって検討したところ、抗カドヘリン抗体処理群で血管新生の有意な増強が観察された。腫瘍細胞から産生される血管新生因子としてIL-1αおよびVEGFを検索したところ、上顎癌および舌癌細胞株において抗カドヘリン抗体処理群でVEGFの産生増加が認められた。 3)まとめ 頭頸部癌におけるE-カドヘリンの機能について検討した今年度の研究では以下の事実が証明された。すなわちE-カドヘリンの機能抑制によって転移が促進され、その機序として癌細胞上のE-カドヘリンの機能を抑制すると癌細胞が離脱しやすくなり、さらに血管内皮増殖因子(VEGF)の産生が高まり血管新生が促進されることによると考えられた。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 山中 昇: "近年における腫瘍免疫研究の進歩とその臨床応用"耳鼻免疫アレルギー. 17(1). 1-7 (1999)
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[Publications] 広橋良彦,山中昇: "非通常型の蛋白,ペプチド翻訳機序により生じた腫瘍抗原T細胞エピトープ"Annual Review免疫. 305-311 (1999)