1999 Fiscal Year Annual Research Report
顎顔面骨における骨治癒過程の顎整形力による制御に関する分子生物学的研究
Project/Area Number |
10470372
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高戸 毅 東京大学, 医学部・附属病院, 教授 (90171454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
引地 尚子 東京大学, 保健管理センター, 講師 (50292876)
須佐美 隆史 東京大学, 医学部・附属病院, 助教授 (80179184)
波利井 清紀 東京大学, 医学部・附属病院, 教授 (50111539)
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Keywords | 顎顔面骨 / 骨治癒過程 / 成長因子 |
Research Abstract |
骨治癒過程における遺伝子レベルの研究は少なく、特に機械的応力に対する反応を調べた分子生物学的研究はみられない。われわれはこの過程における制御因子として、局所的に産生されるオートクライン、パラクライン因子が重要であると考えている。われわれはその中で、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)に着目し、その骨代謝について精査した。 近年、bFGF は骨形成促進効果を示す一方で、骨吸収因子であることが明らかになってきた。またbFGF は、他の成長因子と同様、骨芽細胞を介して破骨細胞に影響を与えるとされてきた。われわれは、膜性骨である頭蓋骨において、bFGFが骨形成作用を持ち、治癒遅延のおこりやすい頭蓋部において、骨損傷治癒促進作用を持つことを示した。一方、bFGFが破骨細胞に対して、直接に骨吸収効果を持つかどうかについても検討した。 bFGFは成熟破骨細胞に対して10^<-11>M の濃度で最大(1.9倍)の骨吸収効果を示した。一方骨細胞の共存培養下では、10^<-9>M の濃度で最大7.5倍の効果を示した。また、p42/p44MAPキナーゼを含む細胞蛋白の燐酸化を促進した。,さらにFGF受容体-1キナーゼ活性を増加させた。これらの結果から、bFGFはFGF 受容体-1とp42/p44MAPキナーゼを経由して、成熟破骨細胞を直接刺激し、骨吸収を促進することが示唆された。このような骨形成・骨吸収の二面性を持つ因子の検討は骨治癒機構の解明に必須である。 われわれはまた、骨粗鬆症ラットにおいて、その骨量変化が顎骨と長管骨とでは異なることも示した。このことは、骨に影響を与える因子は、顎顔面骨領域では長管骨とは異なる作用を持つことを示唆しており、骨治癒の制御においては、顎顔面骨は長管骨と異なる機構を持つことを考慮すべきであることが示された。
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Research Products
(14 results)
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[Publications] Susami T: "Ellis-van Creveld Syndrome ; Craniofacial Morphology and Multidisciplinary Treatment"Cleft Palate-Craniofacial J. 36. 345-352 (1999)
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[Publications] Susami T: "Multi-Bracket Appliance in Management of Madibular Reconstruction with Vascularized Bone Graft"Jpn J Clin Oncol. 29. 119-126 (1999)
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[Publications] Susami T: "Stability after distraction osteogenesis in the mandible follow-up with special attentic to the occlusal changes"2^<nd> International Congress On Cranial and Facial Bone Distraction Processes. 1999 june. 97-100 (1999)
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[Publications] 松本重之: "骨粗鬆症患者の顎骨組織変化に関する実験的研究"Osteoporpsis Japan. vol.7 no.4. 501-503 (1999)
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[Publications] 小宮徳春: "下顎骨仮骨延長症例の中期変化-延長後5年以上経過して-"日顎変性誌. 9. 12-22 (1999)
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[Publications] 高戸 毅: "顎顔面領域における骨延長法の種々の可能性"形成外科. 第42巻. 1133-1144 (1999)
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[Publications] 高戸 毅: "顎顔面領域における骨延長術の応用"Hosp.Dent. 10. 2-17 (1999)
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[Publications] 松本重之: "腫瘍切除後の再建下顎における機能回復-骨延長およびインプラント植立による咀嚼機能回復-"形成外科. 42. 211-220 (1999)
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[Publications] Takato T: "Secondary lengthening of reconstructed mandible using a gradual distraction techique-two case reports"British Jounal of Plastic Surgery. 51(5). 356-358 (1998)
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[Publications] Takato T: "Time-related changes in a case torus palatinus"Jounal of Oral & Maxillofacial Surgery. 56(4). 492-494 (1998)
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[Publications] 高戸 毅: "骨トランスポート法による顎関節形成術に関する実験的研究-第1報 : 形態学的検討"日形会誌. 18,2. 74-82 (1998)
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[Publications] 高戸 毅: "骨トランスポート法による顎関節形成術に関する実験的研究-第2報 : 形態学的検討"日形会誌. 18,2. 83-91 (1998)
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[Publications] 高戸 毅: "Vascularized bone Graft"形成外科. 第42巻. 277-285 (1998)
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[Publications] 高戸 毅: "顎骨延長術の臨床応用"クインテッセンス出版株式会社. 206 (1999)