Research Abstract |
実験動物として,ビーグル犬を用い,下顎左右側第2,3,4前臼歯部に全層弁を形成し,頬側近心根部にCEJより高さ7mm,近遠心幅5mmの範囲で歯槽骨を除去し,近心根を露出させ,頬側裂開型骨欠損を作製した。各骨欠損部には骨再生を阻止する目的でラバー印象材を埋入した。4週間後,ラバー印象材を除去,さらに12週後を実験開始時とし,同部に全層弁を形成,露出根面のルートプレーニングを行い,骨欠損最根尖側にノッチを付与した。その後,直ちに10%EDTA溶液で根面処理を施し生理食塩水で洗浄後EMD群はエナメル基質タンパク(EMDOGAIN【○!R】)を応用,GTR群はe-PTFE膜を各骨欠損部に被覆しGTRを行った。FOP群は通常のフラップ手術のみ行った。観察期間は術後,1,2,4,8週とした。実験期間終了後,通法に従いパラフィン標本を作製し,H-E染色および増殖細胞抗原(PCNA)の免疫組織化学染色を施し観察した。観察部位は各頬側裂開型骨欠損部の近遠心的中央部とした。組織計測としては(1)ノッチ部付近および(2)欠損中央の根表面から1mm離れた結合組織部の各0.8mm×0.8mmの範囲において全細胞数に対するPCNA陽性細胞数の比率(PCNA陽性細胞率)を算出した。また,ノッチを基準として骨形成量を計測した。 結果:術後1週では全群において豊富な新生血管を含む幼若な線維性結合組織がノッチ付近に限局,一部,凝血塊が残存していた。PCNA陽性細胞は全群でノッチ付近に多数認められたが,各群間のPCNA陽性細胞率に有意差は認められなかった。術後2週ではGTR群はe-PTFE膜で被覆された骨欠損内に豊富な新生血管を含む線維性結合組織で満たされ,骨欠損部よりわずかに新生骨が認められた。一方,EMD群およびFOP群では密な結合組織線維束が歯根表面に存在し,新生骨はほとんど認められなかった。EMD群およびFOP群における結合組織部のPCNA陽性細胞は血管周囲にわずかに認められるのに対し,GTR群では多数観察され,PCNA陽性細胞率はGTR群がEMD群およびFOP群より多く統計学的有意差が認められた(P<0.01)。術後4週および8週の新生骨は術後2週の結合組織部におけるPCNA陽性細胞の分布領域にほぼ一致して認められ,EMD群,FOP群では新生骨はノッチ部付近に限局しているのに対し,GTR群では保護膜で被覆されたスペース内はほぼ新生骨で満たされ,骨形成量はEMD群およびFOP群より多く統計学的有意差が認められた(P<0.01)。 以上の結果から,エナメル基質タンパク質応用後の歯周組織再生過程において,骨再生には骨原性細胞の増殖の場が必要であることが示唆された。
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