1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10470467
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
冨士 薫 京都大学, 化学研究所, 教授 (20027056)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 圭 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (50093266)
|
Keywords | 軸不斉 / アトロプ異性 / 分子認識 / スピロベンゾピラン / ビナフチルエーテル / フォトクロミック化合物 |
Research Abstract |
1,1-ビナフチル誘導体に代表される軸不斉を持つ化合物は2つのナフチル環により構成される大きな不斉場を提供する。中心不斉では不斉源そのものには柔軟性は全く無いがビナフチル誘導体は2つのナフチル環のねじれ角が理論的には0°〜180°の間を連続的に変化できるため、同じ絶対配置を保ちつつ不斉源そのものに柔軟性がある。これらの特性のために光学活性ビナフチル誘導体、特に1,1'binaphthalene-2,2'diol誘導体は不斉分子認識及び不斉合成に頻繁に利用されてきた。本研究はナフチル環を組み込んだ新しい軸不斉化合物としてスピロベンゾピラン誘導体およびビナフチルエーテル型化合物を設計しそれを不斉分子認識に応用しようとするものである。 本年度は特に8,8'-位にかさ高い置換基を有する1,1'-ビナフチルエーテルの合成を行った。先に述べた1,1'-binaphthaene-2,2'-diolに代表される軸不斉化合物は一つの単結合の回転束縛によるものであるが本年度の目的化合物は二つの単ヶ愚答を隔てたものであり全く未知の軸不斉化合物である。本化合物はナフチル環のπ電子を含む二つの平面により構成される大きな不斉場を提供できること、及び不斉源自体に二つの回転できる結合を持っているため非常に柔軟性の大きな不斉場を提供できるため本化合物が光学活性体で存在し且つ単離できれば極めて興味深いものである。このような考えに基づいて我々は8,8-位に種々の置換基を有する1,1'-ビナフチルエーテルを合成し、それらが光学活性体として存在しうるかどうかを検討した。その結果8,8'-位に充分大きな置換基を導入すると期待通り光学活性体が存在することを証明し、またそれぞれのエナンチオマーの単離に成功した。このものは単一分子で出来た二枚羽の傘歯車に対応し極めて興味深い物性を示すことを明らかにした。
|