2001 Fiscal Year Annual Research Report
シグナル伝達酵素ホスホリパーゼDの機能調節ドメインと生理的役割に関する研究
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10470480
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Research Institution | TOKYO METROPOLITAN ORGANIZATION FOR MEDICAL RESEARCH, THE TOKYO METROPOLITAN INSTITUTE OF MEDICAL SCIENCE |
Principal Investigator |
金保 安則 財団法人 東京都医学研究機構, 東京都臨床医学総合研究所・参事研究員(部長) (00214437)
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Keywords | ホスホリパーゼD / 小脳顆粒神経細胞 / 神経軸索 / MAPキナーゼ / ホスファチヂン酸 / L1 |
Research Abstract |
二種のほ乳類ホスホリパーゼD(PLD)アイソザイム(PLD1とPLD2)のうち、PLD1の生理機能については解析が進展しているが、PLD2については全く不明である。申請者はこれまでに、PC12細胞におけるNGF依存的な突起伸長に対するPLDの影響を解析した結果、PLD1は影響を与えなかったが、PLD2はERKとp38MAPキナーゼにより活性化されて、突起伸長に重要な役割を果たしていることを明らかにした。この結果は、PLD2が神経軸索あるいは樹状突起の成熟機構に関与していることを示唆している。そこで本年度は、中枢神経においてPLD2が軸索または樹状突起のいずれかの伸展に重要である可能性について、初代培養小脳穎粒神経細胞を用いて検討した。 小脳において、PLD1の発現は検出できなかったが、PLD2の発現は検出できた。また、小脳顆粒神経細胞においてもPLD2の発現が確認できた。小脳顆粒神経細胞は培養数時間後から軸索を伸展し始めるが、シンドビスウイルス発現系を用いてPLD2を過剰発現させると、軸索伸展は促進された。また、PLD産物のホスファチジン酸(PA)を作用させても同様に軸索の伸展促進が認められた。一方、PLD1を過剰発現させても軸索伸展は促進されなかった。小脳顆粒神経細胞に発現している神経接着因子L1を抗L1抗体刺激すると、ERKの活性化を介して軸索伸展が促進されることが知られているが、このL1刺激による軸索伸展の促進は、PLD依存的なPA産生を抑制する一級アルコールにより阻害された。さらに、小脳顆粒神経細胞を抗L1抗体で刺激するとPLD活性が上昇し、このPLD活性化は、ERKの上流因子であるMEKの特異的阻害剤によりほぼ完全に阻害された。 以上の結果から、PLD2は中枢神経細胞において、ERKの下流で機能し、軸索伸展に重要な役割を果たすことが明らかとなった。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] K.Onishi et al.: "PKN regulates phospholippase D1 through direct interaction"J. Biol. Chem.. 276. 18096-18101 (2001)
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[Publications] M.Yamazaki et al.: "Phosphatidylinositol 4-phosphate 5-kinase is essential for RUCK-mediate neurite remodeling"J. Biol. Chem.. (in press). (2002)
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[Publications] Y.Kanaho, T.Suzuki: "Phosphoinositide kinases as enzymes that produce versatile signaling lipids, phoshoinositldes"J. Biochem.(Tokyo), Review. (in press). (2002)
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[Publications] Y.Kanaho, M.: "Phosphatidylinositol 4-phosphate 5-kinases : Regulation and functions"J. Biochem.(Tokyo),Review. (in press). (2002)
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[Publications] 金保安則, 野沢義則: "化学と生物 実験ラインと「タンパク質と核酸の分離精製」"廣川書店. 470 (2001)