1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10470518
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
渡邊 清明 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (20101983)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川合 陽子 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (00129727)
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Keywords | Mel-CAM / Eセレクチン / 接着因子 / 血管内皮細胞 / 血流 / 内皮細胞障害 / リポポリサッカライド(LPS) / 腫瘍壊死因子(TNF) |
Research Abstract |
血管内皮細胞が血栓形成に果たす役割は大きい。われわれは血管内皮細胞における線溶制御機構の調節や凝固活性の初期段階に重要な役割を果たす組織因子(TF)の動態に、サイトカインの向凝固活性をうち消す方向で制御している「血流」の役割が重要であることを明らかにしてきた。一方、凝固制御因子である組織因子経路抑制因子(Tissue factor pathway inhibitor:TFPI)は血流の影響は殆ど受けず、血管での血栓制御機構は複雑なネットワークであることが示唆された。本年度は、炎症性サイトカインなどによる血管内皮細胞の血栓性への変化には、接着因子の関与も重要であることに着目し、血管内皮細胞膜上に発現している接着因子であるEセレクチンとMel-CAMの動態を検討した。ヒト鼻粘膜微小血管内皮細胞を抗原として作成したモノクローナル抗体を利用した。ヒト臍帯静脈血管内皮細胞(HUVEC)を培養し、炎症性サイトカインの一つである腫瘍壊死因子(tumor necrosis factor;TNF)やリポポリサッカライド(LPS)を負荷し、血流の存在下での動態を、免疫染色法・ELISA法による抗原量の測定・フローサイトメトリー法による細胞表面の変化などを用いて検討した。免疫組織法による観察では、Eセレクチンは静止時未刺激では発現は殆ど認められず、TNFやLPS刺激後3〜6時間での発現が増強した。一方Mel-CAMは静止時未刺激でも発現が強く認められ、TNFやLPS刺激後の変化は軽度であった。ELISA法による抗原量の変化の測定では、TNFやLPS刺激後のMel-CAMの細胞内発現量は殆ど変化しないが、培養上清中の放出が増大し、血流により抑制される傾向が認められた。HUVEC膜上の発現をレーザーフローサイトメトリーにて測定したところ、TNF刺激で発現が増加したがLPS刺激では発現の増加が認められなかった。
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[Publications] Matsumoto Y,Kawai Y, Watanabe K.Et al: "Fluid shear stress attenuates tumor necrosis facotr-α-induced tissue factor expression in cultured human endothelial cells"Blood. 91(11). 4164-4172 (1998)
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[Publications] 川合陽子,酒居一雄: "血管内皮細胞と血栓形成:血流と凝固・線溶因子"現代医療. 30(6). 25-31 (1998)
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[Publications] 渡辺清明: "血液凝固の機序・指標とDダイマーの意義"日本医事新報社. 117-118 (1998)
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[Publications] 渡辺清明: "DICの病態と診断の現状"日本臨床検査自動化学会誌. 23(7). 753-761 (1998)
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[Publications] 川合陽子,酒居一雄: "血栓形成の機序:血小板と内皮細胞との相互作用"臨床医. 25(1). 16-20 (1999)
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[Publications] 川合陽子,渡邊清明: "血管内皮細胞障害の分子マーカー"Medical Practice. 17(2). 270-271 (2000)