2000 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10480016
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Research Institution | OCHANOMIZU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
無藤 隆 お茶の水女子大学, 生活科学部, 教授 (40111562)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高濱 裕子 会津大学, 短期大学部, 助教授 (10248734)
田代 和美 お茶の水女子大学, 生活科学部, 助教授 (80227074)
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Keywords | 幼児 / 保育 / 身体知 / アフォーダンス / 遊び / 子ども同士の相互作用 |
Research Abstract |
本研究は、保育における知的なあり方を生態学的な場面における身体的な振る舞いに求め、その「身体知」の様相と発達を、主として観察法を通して検討したものである。特に、一つの幼稚園における1クラスの3年間の縦断研究を柱に、他の幼稚園での定期的観察や実践的共同研究、また、少数の子どもの追跡観察等を組み合わせて研究した。また、保育者への調査も行った。その結果、保育場面における幼児の学びのあり方を、「入り込む学び」、「眺める学び」、「想像する学び」の三つに分けて、検討した。特に、幼稚園の園環境の中に入り込み、その中で動き回って、学んでいく過程が他の二つの学びの基礎にあることを事例から論じた。さらに、その入り込む学びは、子どもと子ども・大人とものとの関係とそれらを取り囲む場の中にあることが分かった。それらの関係は、物理的身体的関係をベースとして、動き回りつつ認識することや相手とのやり取りを行うことにより成り立つ。その関係の成り立ちを「身体知」と呼ぶ。 具体的には、第一に、幼児が互いに同様の動きをすることについて、身体の働きを子どもの遊びのイメージの構成や互いの関係の構成によって分類して、そこで関係を取り結ぶ機能を果たしていることを示した。第二に、幼児がふざける場面でその場における通常の振る舞い方や発言からの逸脱が意味を担うことを検討した。第三、幼稚園における代表的ないくつかの場面で、言葉で明示的に働きかけるのではなく、身体的振る舞いや暗黙的発言を通して仲間入りを行うことの重要性を示した。さらに、保育者の保育における身体性を検討した。その変容が保育カンファランスやビデオの振り返りや保育の振り返りを通して生じることを見出した。以上から、身体知という見方を保育の場の分析に広げ、また子ども同士のやり取りや保育者の保育行為の分析に拡大できた。
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Research Products
(25 results)
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[Publications] 無藤隆: "2歳児の電車遊びと母子の交渉"お茶の水女子大学人文科学紀要. 52. 301-315 (1999)
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[Publications] 無藤隆: "研究と実践をつなぐ論文の可能性:高橋(1997)論文へのコメント"発達心理学研究. 10. 235-236 (1999)
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[Publications] 無藤隆: "幼児の仲間入りにおける交渉過程"お茶の水女子大学人文科学紀要. 53. 387-401 (2000)
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[Publications] 無藤隆: "保育における学びの三つのモード論"お茶の水女子大学人文科学紀要. 54(印刷中). (2001)
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[Publications] 高濱裕子 他: "仲間との関係形成と維持:幼稚園期3年間のいざこざの分析"日本家政学会誌. 50. 465-474 (1999)
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[Publications] 高濱裕子: "保育者の熟達化プロセス:経験年数と事例に対する対応"発達心理学研究. 11. 200-211 (2000)
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[Publications] 田代和美: "お茶の水女子大学幼児教育現職研究会に関する一考察"お茶の水女子大学人文科学紀要. 53. 417-433 (2000)
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[Publications] 田代和美: "お茶の水女子大学幼児教育現職研究会に関する一考察(2)"お茶の水女子大学人文科学紀要. 54(印刷中). (2001)
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[Publications] 福田秀子 他: "園舎の改善を通しての保育実践の変容I:研究者と保育者によるアクションリサーチの試み"保育学研究. 38. 223-230 (2000)
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[Publications] 掘越紀香 他: "幼児にとってのふざけ行動の意味:タブーのふざけの変化"子ども社会研究. 6. 43-55 (2000)
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[Publications] 掘越紀香: "研究協力者と研究者との関係における倫理問題の検討:ソシオメトリック・テストを例にして"Inter-Field(フィールド解釈研究会紀要). 1. 39-56 (2000)
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[Publications] 古賀松香 他: "幼稚園児における自発的な'歌'とその出現場面との関連"保育学研究. 36. 20-27 (1998)
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[Publications] 古賀松香: "関係が新しくひらかれるとき:危機的状況を越えて"障害児教育学研究. (印刷中).
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[Publications] 小林紀子 他: "幼稚園におけるアクション・リサーチ:園内研修における保育者と研究者の協同的関係の構築"お茶の水女子大学発達臨床心理学紀要. 2. 1-13 (2000)
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[Publications] 松井淳子: "集団活動場面における幼児の他者理解:友だちについての語りの観察から"乳幼児教育学研究. 8. 53-61 (1999)
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[Publications] 松井淳子: "幼児期におけるパーソナリティ特性理解の発達"幼児期におけるパーソナリティ特性理解の発達. 23. 116-123 (2000)
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[Publications] 松井愛奈: "見ること,見えること,問いを立てること:幼稚園の観察から"Inter-Field(フィールド解釈研究会紀要). 1. 4-16 (2000)
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[Publications] 砂上史子 他: "子どもの仲間関係と身体性:仲間意識の共有としての他者と同動きをすること"乳幼児教育学研究. 8. 75-84 (1999)
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[Publications] 砂上史子: "ごっこ遊びにおける身体とイメージ:イメージの共有として他者と同じ動きをすること"保育学研究. 38. 177-184 (2000)
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[Publications] 無藤隆: "幼児期にふさわしい知的発達"チャイルド本社. 93 (2000)
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[Publications] 無藤隆 他: "4歳と5歳:身体の関係と経験から岡本夏木,麻生武(編),年齢の心理学"ミネルヴァ書房. 177-213 (2000)
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[Publications] 無藤隆: "知的好奇心を育てる保育"フレーベル館. 190 (2001)
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[Publications] 田代和美: "育ちを支える;新しい保育ニードへの対応 戸田雅美,鳥海順子(編),保育者論"相川書房. 1-12 130-144 (2000)
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[Publications] 田代和美: "子どもの表現II 表現活動の育つ過程 阿部明子,竹林実紀子(編),表現"東京書籍. 25-38 (2000)
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[Publications] 田代和美 他: "カウンセリング・マインドの探求:幼児期から探る"フレーベル館(印刷中).