2000 Fiscal Year Annual Research Report
書字の獲得とその困難さに関する実証的研究-小学校低学年におけるひらがな書字を中心として-
Project/Area Number |
10480042
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Research Institution | IBARAKI UNIVERSITY |
Principal Investigator |
篠田 晴男 茨城大学, 教育学部, 助教授 (90235549)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小野瀬 雅人 鳴門教育大学, 学校教育部, 助教授 (40224290)
尾崎 久記 茨城大学, 教育学部, 教授 (40092514)
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Keywords | 書字技能 / 書字困難 / ひらがな書字 / 図形模写 / 視線 / 筆圧 / 視知覚認知 |
Research Abstract |
最終年度としてタブレットを用いた可搬型の新多角的書字行動観察システムを用い、ひらがな書字技能の習熟に困難を有する小学校低学年児童を対象に実践的検討を行った。今回の検討では、本児童の認知処理特性を事前に検討し、同時処理能力の優位性を考慮した援助方針に従い、一定期間の継続的な指導援助について、本システムでの評価に基づき有効性を検証した。具体的な検討方法と結果は以下の通りである。 1.児童の実態と指導手続き:小学校2年男児。視知覚認知能力の弱さ、注意集中力の弱さを伴い、適切な筆圧での書字が未習熟で効率のよい書字行為の獲得が困難であった。本児童に対し、週に一度定期的に継続した指導援助を行い、計14回にわたる経過を分析した。課題内容は、ひらがな課題(長円部を含む「の」「し」等7種)のほか、図形模写課題(点結び課題6種)、漢字書字課題(字形の再現の誤りが多い、「手」等12種)から構成された。今回のシステムでは、CCDカメラにより視線の動き、筆記具の把持の様子、書字の様子を撮影し、書字結果と動画による行動特徴を同時にパソコンモニタに出力しDV記録した。 2.結果:ひらがな書字時の筆圧変化は、指導回数を重ねるに従い、その最大値と最小値の差が一定の値に収束するとともに、波形も滑らかで変曲点の数が集約された特徴的なパタンとなり、字形の改善を促す筆圧調整ポイントを波形と変曲点から見いだすことができた。また、言語による筆圧調整が可能なことも筆圧指標から確認され、言語教示による筆圧調整ポイントの意識化が字形の改善に促進的に作用した。同時に行った図形模写語題では、形態認知に関する困難さが残存したが、漢字書字においては、構成要素の分節化により、一定程度の改善がみられた。今回、パソコン画面へ書字結果が表示されたことから、その形態を確認し自己評価する行動がみられ、書字行為への注意集中を促すことにもなった。
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[Publications] 篠田晴男: "平仮名書字の習得とその困難さに関する認知行動特性(2)"日本特殊教育学会第38回大会発表論文集. 567 (2000)
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[Publications] 木村悦子,勝二博亮,尾崎久記: "表面筋電図による腕上げ動作とその動作訓練過程の検討"茨城大学教育学部紀要(自然科学). 50. 89-97 (2001)
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[Publications] 真壁毅,勝二博亮,尾崎久記: "幾何学図形識別時有効視野と周辺視力の関係"生理心理学と精神生理学. 18・2. 129 (2000)