2000 Fiscal Year Annual Research Report
海難の人的要因に関するインシデントレポーティングシステムの開発
Project/Area Number |
10480089
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Research Institution | Toyama National College of Maritime Technology(T.N.C.M.T.) |
Principal Investigator |
山崎 祐介 富山商船高等専門学校, 商船学科, 教授 (90132597)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
遠藤 真 富山商船高等専門学校, 商船学科, 教授 (40149919)
村山 義夫 (財)海上労働科学研究所, 第一部主査
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Keywords | 船舶 / 海上交通 / 海難 / 事故調査 / インシデント / ヒューマンファクター / 監視作業 / 操船 |
Research Abstract |
これまでの研究成果から、筆者等は、未然事故調査を有効にするためには、現場から積極的な回答が得られること、重要なPSFを簡便な質問紙に作り上げること、といった課題があることを指摘しこれらを検討して二回目の未然事故調査を実施した。いかに調査票を開発したか、いかに調査を実施したか、その成果はどのようであったか、すなわち、調査票の内容、調査の実施法、回答状況と未然事故の実態について日本航海学会で発表し、論文集に掲載された。今回の調査で回収率とヒヤリ経験の回答率の向上がみられ、試行調査の約3倍の効率で資料を収集できた。これは、調査票設計の基本コンセプトや調査に対しての理解を得る手続きが効を奏し、回答者の本調査への積極さが実現したためである。漁船が対象のヒヤリ経験が圧倒的に多く、日本周辺海域の大きな課題といわれている「船舶通航と漁労」について現場における困難さを客観的に再認識できた。また、ヒヤリの概念による回答と発生時機や対象までの距離について具体的回答を得たことによって他の研究との対照も可能となった。ヒヤリ経験は、対象と極めて接近した状況で発生していた。このように、PSFを解析し安全対策の重要課題を探るための有用なヒヤリ経験情報を収集することが出きることが分かった。また、協力を得た会社に対して、報告会(東京で10月17日、大阪で、10月25日)を行った。北海道、九州地区の船社を除く調査対象船社の殆んどの安全担当者が参加した。遠隔地で来られなかった会社に対しては報告書を送った。まず、「安全管理はトップがその気にならなければだめ」ということが立証された形となって、ヒヤリ回答率が向上したことについて安全担当者は強い関心を持ち分析結果に対して日頃、彼らが感じていることの多くが如実にデータ集計結果に出ていたことに驚き、今後の更に深い解析を要望した。今後の日本航海学会で発表することを計画している。なお、今後の展開として安全担当者から、各社で調査を行うための、防止対策が分かるソフトを開発してほしいなどの要望が寄せられた。この調査を一般化し、共通部分、各船種部分、各社固有部分の調査票とし、各社で調査を行い分析すると同時に、各社の入力済みのデータを安全航行研究会に集めてデータベース化し、全般的傾向、船種・分野別に安全対策の評価等を年毎に行えば更に効果的な安全管理につながるという提案もあった。今後は、調査票を更に改善すると同時に彼らの要望に答えることができるように実用システム化のための研究を展開していきたい。
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[Publications] 山崎祐介,村山義夫,遠藤真: "未然事故調査法の開発と応用-I"日本航海学会論文集. 104号. 173-178 (2001)
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[Publications] Y.Yamazaki,Y.Murayama and M.Endo: "Incident Reporting System For Safety Management on Watch-keeping"Proceeding "11th Cogress of Interbanational Maritime Lectures' Association (Sweden)". 1-12 (2000)
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[Publications] Y.Murayama,Y.Yamazaki and M.Endo: "Performance Measurements to Motivate System Operator"Proceeding of 3rd International.Conf.Building People and Organizational Excellence (Denmark). Vol.2. 418-422 (2000)
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[Publications] 村山義夫,山崎祐介,遠藤真 他: "操船事故の人的要因調査についての考察"日本航海学会論文集. 102号. 173-181 (2000)
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[Publications] 山崎祐介,村山義夫: "ヒヤリハットを生かす 第一編 船舶事故はなぜ、どうして起こるか"海と安全,日本海難防止協会. 496号. 2-5 (2000)
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[Publications] 山崎祐介,村山義夫: "ヒヤリハットを生かす 第二編 事故防止のための事故調査へ"海と安全,日本海難防止協会. 497号. 20-23 (2000)
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[Publications] 山崎祐介,村山義夫: "ヒヤリハットを生かす 第三編 ヒヤリハット調査と船舶事故"海と安全,日本海難防止協会. 499号. 10-13 (2000)
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[Publications] 村山義夫,山崎祐介: "ヒヤリハットを生かす 第四編 調査で何を知ればよいか"海と安全,日本海難防止協会. 503号. 6-8 (2000)
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[Publications] 村山義夫,山崎祐介: "ヒヤリハットを生かす 第五編 どのように調査するか"海と安全,日本海難防止協会. 504号. 8-11 (2001)
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[Publications] 村山義夫,山崎祐介: "ヒヤリハットを生かす 第六編 ヒヤリの状況"海と安全,日本海難防止協会. 505号. 12-15 (2001)