1999 Fiscal Year Annual Research Report
連合学習機構解明へのSimple Nervous System Approach
Project/Area Number |
10480176
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
桐野 豊 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 教授 (10012668)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡辺 恵 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (80302610)
川原 茂敬 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (10204752)
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Keywords | 連合学習 / ナメクジ / 嗅覚 / 初代培養神経細胞 / 細胞外マトリックス蛋白 / LAPS18 / differential display法 |
Research Abstract |
本研究は単純な神経システムを持ちながら高度な嗅覚学習能力を有するナメクジにおいて,学習・記憶の機構を分子レベルおよび神経回路レベルで明らかにすることを目的としている。すでに differential display 法によって、忌避性嗅覚条件付けで特異的に発現が変化する遺伝子の存在を確認し,その全長配列を決定してLAPS18と名付けた。これは121残基のアミノ酸をコードしており,機能が未知の新規遺伝子である.本年度はこの遺伝子の機能を明らかにするために,この遺伝子産物の発現パターンの解析を行った。 はじめにLAPS18蛋白の発現量の時間経過を調べたところ,条件付けの12時間後から48時間後まで、コントロールと比べて有意に増大することを明らかにした.このことは,LAPS18が学習の特にlate phaseに関わる遺伝子であることを示唆するものである.次にLAPS18蛋白に対する免疫染色を行い,条件付け前後でのLAPS18の局在を比較した.その結果,条件付け前には、LAPS18は嗅覚中枢である前脳の全体に分布していたが,条件付き後では神経突起層に著しい局在を示した。そこで次に初代培養前脳神経において、共焦点レーザー顕微鏡を用いてその局在を詳細に調べると,細胞同士が接着している部位に特にLAPS18が局在していることが明らかになった.これらの結果から,LAPS18は神経細胞体で生合成された後,神経突起を経由して末端で分泌される細胞外マトリックス蛋白質の1種であり、神経終末および細胞接着面に分布し,シナプス結合の修飾に関与するものと考えられた.LAPS18は,ホモログ遺伝子が種を越えて広く存在することから,学習・記憶における重要な機能を担っているものと考えられた。
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Research Products
(13 results)
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[Publications] 渡辺 恵 他: "ナメクジにおける嗅覚-味覚連合学習"蛋白質核酸酵素. 45. 380-386 (2000)
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[Publications] Watanabe,S.et al.: "Glutamate induces Cl^- and K^+ currents in the olfactory interneurons of a terrestrial slug"J.Comp.Physiol.A. 184. 553-562 (1999)
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[Publications] 渡辺恵 他: "ナメクジの嗅覚-味覚連合学習"放射線科学. 42. 26-34 (1999)
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[Publications] Inoue,T.et al.: "In vitro odor-aversion conditioning and underlying neural mechanism in a terrestrial mollusc"Neurosci.Res.. 23. S256-S256 (1999)
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[Publications] Inoue,T.et al.: "In vitro odor-aversion conditioning in a terrestrial mollusk"Soc.Neurosci.Abstr.. 25. 126-126 (1999)
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[Publications] 川原茂敬: "遺伝子変異マウスの瞬目反射条件付け"実験医学. 17. 153-158 (1999)
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[Publications] Tomita,S.et al.: "Interaction of a neuron-specific protein containing PDZ domains with Alzheimer'amyloid precursor protein"J.Biol.Chem.. 274. 2243-2254 (1999)
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[Publications] 川原茂敬 他: "瞬目反射条件付けと小脳・海馬"放射線科学. 42. 252-259 (1999)
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[Publications] Ando,K.et al.: "Role of phosphorylation of Alzheimer'amyloid precursor protein during neuronal differentiation"J.Neurosci.. 19. 4421-4427 (1999)
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[Publications] 渡辺 恵 他: "無脊椎動物の脳の働き 「脳研究への招待」 (木幡邦彦 編)"共立出版 (印刷中). (2000)
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[Publications] 桐野 豊: "基礎薬学・物理化学 (改訂版)"廣川書店. 460 (1999)
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[Publications] 桐野 豊: "生命科学シリーズ・物理化学(上)"共立出版. 217 (1999)
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[Publications] 桐野 豊: "生命科学シリーズ・物理化学(下)"共立出版. 250 (1999)