1998 Fiscal Year Annual Research Report
ナノ秒温度ジャンプを用いた蛋白質高次構造変化の時間分解振動分光学的研究
Project/Area Number |
10480187
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
北川 禎三 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 教授 (40029955)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小倉 尚志 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (70183770)
水谷 泰久 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (60270469)
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Keywords | 温度ジャンプ / 時間分解ラマン / ナノ秒温度ジャンプ / 蛋白質高次構造変化 / 蛋白質フォルディング / 振動分光 |
Research Abstract |
本年度はナノ秒温度ジャンプ装置を製作することからスタートした。Nd:YAGレーザーの基本波(1.064μm)を1mの長さの水素ガスセルに導き誘導ラマン散乱を起こさせる。そのストークス1次光(1.96μm)は水の高次赤外吸収帯のピーク波長に近い。この光を分離して試料を照射し、それよりΔt秒遅れて別のNd:YAGレーザーを発振させ、その第2高調波(0.532μm)をとって、それを先の近赤外光と重ねて試料に入射し、その光に対するラマン散乱を測定する。ラマン散乱観測用にMoO^<2->_4イオン水溶液を試料セルに入れて、MoO^<2->_4の317cm^<-1>と897cm^<-1>のストークスラマンとアンチストークスラマンの強度を同時に測定した。ストークス/アンチストークスの強度比から温度を見積るアイディアである。繰返し10Hz、パルス幅10nsのレーザーを用い、水素圧を数気圧まで上げたところ誘導ラマンは発生した。試料セルの厚さを20μmにし、Na_2MoO_4水溶液のラマン散乱を測定した。セルの厚さ20μmに対し、レーザーの入口側と出口側で温度上昇に差ができ温度が不均一になることがわかった。そこで誘導ラマン光を2つに分け、試料セルの両側から入射した。これで光照射部分はかなり均一に温度が上昇した。MoO^<2->_4イオンのラマン線で温度を測定したところ、20ナノ秒の間に20℃の温度上昇が起こっていて、それは約3ミリ秒持続することが明らかとなり装置の基本は出来上がったと思った。ところが、タンパク水溶液に対しては、20μmの厚さでは飽和濃度迄濃度をあげても蛋白のラマンシグナルは見えなかった。蛋白のラマンシグナルが見えるまでセルの厚さを厚くしていくと、誘導ラマン光が入口近くで吸収され、奥に入らないため、内側の温度が上がらないという問題が出てきた。そのため、吸光度が小さい吸収を利用すべく重水素ガスの誘導ラマン散乱で1.57μmの光を得る努力をした。粁余曲折はあったが最終的に成功し、本年のアメリカでの国際学会で蛋白の測定結果を発表することにしている。
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