2000 Fiscal Year Annual Research Report
rasノックアウトマウスを用いた新規のRasシグナル伝達機構の研究
Project/Area Number |
10480197
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
饗場 篤 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (20271116)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中尾 和貴 東京大学, 医科学研究所, 寄付研究部門教員 (20217657)
中村 健司 東京大学, 医科学研究所, 助手 (90253533)
|
Keywords | H-ras / N-ras / K-ras / ノックアウトマウス / 2重欠損マウス / トランスジェニックマウス / チロシンリン酸化 |
Research Abstract |
哺乳類の3種のras,H-,N-,K-rasをそれぞれ欠損したマウスおよび多重ras欠損マウスを作成、解析した。H-ras欠損およびN-ras欠損マウスさらにH-rasN-ras2重欠損マウスは見かけ上正常に発達、成長し、寿命も野生型と変わらなかったが、K-rasノックアウトマウスは胎生期に致死となった。H-ras欠損マウスではDMBAおよびTPAによる化学皮膚発がん実験で、皮膚パピローマの数が野生型の約7分の1になった。また、H-ras欠損マウスに生じたパピローマでは半数以上でK-rasに活性化型の変異が生じていることを明かとした。従って、腫瘍形成能については活性化型H-Rasの機能を活性化型K-Rasが補えることがわかった。また、K-ras欠損マウスにヒトプロト型H-ras遺伝子を導入したトランスジェニックマウスでは致死が回復した。従ってRasタンパク質の機能は細胞増殖、初期発生において重複していると示唆された。また、H-ras欠損マウスの海馬ではグルタミン酸受容体の一種であるNMDA受容体チャンネルのNR2サブユニットのチロシンリン酸化の向上、それに伴うNMDA受容体を介するシナプス応答の上昇、さらにはシナプス伝達の長期増強の増加が見られた。従って、H-Rasタンパク質はNMDA受容体のチロシンリン酸化を制御することにより、NMDA受容体応答、長期増強を制御していることが示唆された。また、Ras情報伝達系とNMDA受容体の関係を明らかにするため、海馬培養細胞をNMDA刺激した。この時、ERKおよびp38MAPKの活性化と共に、NMDA受容体のチロシン脱リン酸化が起こることが明かとなった。また、このERKの活性化にはRasの活性が必要であることが明かとなった。
|
Research Products
(3 results)
-
[Publications] Ichise,T. et al.: "mGluR1 in cerebellar Purkinje cells essential for long-term depression, synapse elimination, and motor coordination."Science. 288・5472. 1832-1835 (2000)
-
[Publications] Manabe,T. et al.: "Regulation of long-term potentiation by H-Ras through NMDA receptor phosphorylation."J Neurosci.. 20・7. 2504-2511 (2000)
-
[Publications] Ise K, et al: "Targeted deletion of the H-ras gene decreases tumor formation in mouse skin carcinogenesis."Oncogene. 19・26. 2951-2956 (2000)