1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10480209
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
小椋 利彦 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教授 (60273851)
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Keywords | 肢芽 / 前後軸 / Alx4 / ソニックヘッジホグ(Shh) / レチノイン酸 / Strong's luxoid / 多指症 |
Research Abstract |
本研究によって、平成10年度は新規の転写因子Alx4の機能解析で新しい知見を得た。Alx4はpaired型のホメオドメインをもつ転写因子で、本研究により単離され、肢芽の前方部にのみ発現することが明らかとなった。レチノイン酸とソニックへッジホグ(Shh)との関連を探る目的で、これらの因子を肢芽前方部に作用させると,Alx4の発現が抑制されることが明らかとなった。したがって、Alx4はレチノイン酸やShhと拮抗的に働くことが予想された。また、マウスのAlx4を染色体上にマップしたところ、Strong‘s luxoidとよばれる軸前性多指症変異マウスの位置に一致した。この変異マウスからAlx4 遺伝子を単離し解析したところ16bpの欠失が確認された。これらの事実は、Alx4がStrong‘s luxoidの原因遺伝子であること、またStrong‘s luxoidの肢芽では前方部に異所的にShhの発現をみることから、Alx4が肢芽前方部でShhの発現を抑制していること、Alx4の変異でこの抑制がはずれてShhが発現して軸前性多指症を引き起こすことが明らかとなった。すなわち、肢芽においては前方部のAlx4と後部のShhの間にnegative feedbackが存在し、この調節関係が肢芽の前後軸の決定に重要であると結論できる。平成10年度では肢芽前方部に存在すると予想させるシグナルの実体は明らかにできなかったが、Alx4遺伝子の発見は肢芽の前後軸がShh単独で一義的に決まるのではなく、前後のシグナルの拮抗的な関係の上に成り立つことを明らかにした。
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