1999 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
10480209
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
小椋 利彦 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 助教授 (60273851)
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Keywords | 肢芽 / Alx4 / Strong's luxoid / 軸前性多指症 / Shh / Gli3 |
Research Abstract |
本研究では、肢芽の前方部に存在すると予想されるシグナルセンターを解明する目的で、肢芽前部に特異的に発現する遺伝子の検索を行った。その結果、新規のPaired typeのホメオボックス遺伝子であるAlx4を単離した。この遺伝子は、ニワトリとマウスの両者での肢芽の発生直後から肢芽前部に限局して発現していた。この発現パターンは、ソニックヘッジ゜ホグ(Shh)の初期発現とは相補的であった。マウスの遺伝学的なデータを利用して解析したところ、この遺伝子は、マウスの有名な軸前性多指症であるStrong's luxoid(Ist')の位置にマップされた。詳細に検討を加えたところ、Ist'マウスのAlx4遺伝子に16bpの欠失が見つかった。これは、Alx4の変異が、Shhの異所的発現を肢芽前部に引き起こすと、Alx4はShhの発現を負に調節して肢芽後部に発現を限局させていることを示していた。ニワトリを使って詳細に確認したところShhを肢芽前部に作用させるとAlx4の発現が極めて急速に抑制されること、Alx4の発現はShhの発現より早く起こることなどの知見が得られた。また、Alx4は、肢芽前部に発現する他のGli3とは全く別のシグナル経路で働くことが明らかとなった。 以上の知見を総合すると、肢芽では、その発生の初期にAlx4が肢芽前部で発現してShhに抑制的に働き、Shhは肢芽後部に限局して発現する。その後、ShhもAlx4に抑制的に働く結果、Alx4は前部に、Shhは後部に発現が相補的に維持される。肢芽の発生後期には、Gli3などの遺伝子がShhの発現を負に地調節しながら肢芽の前後軸の非対称性を維持確立していく。このような負の調節関係が乱れると、Shhが肢芽前部で異所的に発現し、軸前性多指症を引き起こす。したがって、肢芽の前後軸は前部と後部との密接な相互作用から決定されることを示している。このような知見は、これまでの理解をより広く、かつ深くするものであり、医学的にも重要な発見である。
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