2000 Fiscal Year Annual Research Report
グルタミン酸トランスポーター機能異常によるてんかん発症機序の解析
Project/Area Number |
10480221
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
田中 光一 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (80171750)
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Keywords | グルタミン酸 / トランスポーター / シナプス伝達 / 興奮毒性 / 可塑性 |
Research Abstract |
今年度は、てんかん発作におけるグリア型グルタミン酸トランスポーターGLT1、神経型グルタミン酸トランスポーターEAAT4の役割を中心に解析した。 1)GLT1欠損マウス、致死性の自発てんかん発作により、12週齢までに約80%が死亡してしまう。てんかんの発作パターンはNMDAを皮下注した時に観察される発作と類似しており、突然ケージの中を走り回り反弓緊張様姿勢をとり、パタッと死んでしまう。この致死性てんかん発作の発生機序を解析するため、海馬スライス標本を用いて、グルタミン酸シナプス伝達を電気生理学的に調べた。海馬のCA1錐体細胞で記録されるシェーファー側枝による興奮性シナプス後電流(EPSC)には、AMPA受容体を介するEPSCとNMDA受容体を介するEPSCの2種類がある。各々の成分の時間経過を欠損マウスで調べたところ、野生型と差はなかった。また、EPSCのNMDA受容体を介する成分とAMPA受容体を介する成分の振幅の比を調べると、野生型に比べ欠損マウスではNMDA受容体を介する成分が増大していた。さらにGLT1欠損マウスでは、静止時細胞外グルタミン酸濃度が上昇しており、長期抑制は正常であるが、長期増強が起こりにくくなっていることがわかった。以上のことから、GLT1欠損マウス海馬のグルタミン酸作動性シナプスにおいて、EPSCのカイネティクスに変化はないが、シナプス間隙からのグルタミン酸除去能が低下しており、静止時細胞外グルタミン酸濃度が上昇し、EPSCのNMDA成分が増大・長期増強の誘導阻害が起こっていることがわかった。これらのシナプス伝達異常が、どのように致死性・自発性てんかん発作発現に結びつくかは今後の課題である。 2)EAAT4欠損マウスに明かな異常はなく、自発性てんかん発作・PTZ誘発性てんかん発作に対する感受性亢進は観察されなかった。
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[Publications] Gray,C.: "Glutamate does not play a major role in controlling bone growth."J Bone Miner Res. (In press). (2001)
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[Publications] Yamada,K.: "Dynamic transformation of Bergmann glial fibers proceeds in correlation with Dendritic outgrowth of cerebellar Purkinje cells."J Comp Neurol. 418. 106-120 (2000)
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[Publications] Hakuba,N.: "Exacerbation of noise-induced hearing loss in mice lacking the glutamate transporter GLAST."J Neurosci. 20. 8750-8753 (2000)
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[Publications] Tanaka,K.: "Functions of glutamate transporters in the brain."Neurosci Res. 37. 15-19 (2000)