2000 Fiscal Year Annual Research Report
GAD遺伝子ノックアウトマウスを用いたGABAの中枢神経系における役割の研究
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10480229
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Research Institution | NATIONAL INSTITUTE FOR PHYSIOLOGICAL SCIENCES |
Principal Investigator |
小幡 邦彦 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 教授 (60013976)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
兼子 幸一 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助手 (50194907)
柳川 右千夫 岡崎国立共同研究機構, 生理学研究所, 助教授 (90202366)
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Keywords | GABA / グルタミン酸脱炭酸酵素 / 遺伝子ノックアウトマウス / 扁桃体 / 情動行動 / 口蓋裂 |
Research Abstract |
抑制性神経伝達物質GABAは脳内でグルタミン酸脱炭酸酵素(GAD)によって合成されるので、GADの2型すなわちGAD65とGAD67の遺伝子をそれぞれノックアウトし、脳内GABAが減少したマウスを作成して、その神経系を解析することによりGABAの脳の構造と機能における役割を研究した。GABAは胎児期に存在するが、生後も成熟期まで増加する。ノックアウトマウスでの解析から、胎児期のGABA合成にはもっぱらGAD67が、生後のGABA合成にはGAD65が関与していることがわかった。GABA量は前者の欠損で胎児新生児で10%以下に、後者の欠損で成熟動物で50-70%に減少した。GAD67欠損新生マウスには口蓋裂と呼吸運動異常がみられ、この原因として前者は舌下神経核の機能異常が推定され、後者は呼吸運動中枢の機能異常が示された。ノックアウト胎児では口蓋原基の水平転位が起こらないため口蓋裂となるが、妊娠マウスにGABAを持続注入すると水平転位が起こった。しかし口蓋裂の防止には至らなかった。なお両GADを欠損させるGABAが消失したが、脳の組織形成の障害は見いだされなかった。GAD65欠損成熟マウスでは不安高進、異常恐怖反応等の情動行動異常がみられ、脳波または行動でてんかん発作がみられた。恐怖条件付けの中心部位とされる扁桃体の電気生理学的解析で、GAD65欠損扁桃体ニューロンにおける興奮性伝達の高進と抑制性伝達の低下が見いだされた。GAD67欠損マウスは口蓋裂のため生存できず、生後の機能を調べられないので、任意の時期、部位で欠損させるコンディショナルノックアウトの作成を企てている。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Stork O. et al.: "Postnatal development of a GABA deficit and disturbance of neural functions in mice lacking GAD65."Brain Res.. 865・1. 45-58 (2000)
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[Publications] Makinae K. et al.: "Structure of the mouse glutamate decarboxylase 65 gene and its promoter : Preferentia1 expression of its promoter in the GABAergic neurons of transgenic mice."J.Neurochem.. 75・4. 1429-1437 (2000)
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[Publications] 小幡邦彦: "グルタミン酸デカルボキシラーゼ・ノックアウトマウスでみたGABAのはたらき"自律神経. 37・2. 191-194 (2000)
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[Publications] 小幡邦彦,柳川右千夫: "2種類のGADの機能"CLINICAL NEUROSCIENCE. 18・7. 105 (2000)
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[Publications] 柳川右千夫,小幡邦彦: "神経伝達物質を決定する遺伝子"脳の科学. 22・9. 1031-1034 (2000)
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[Publications] 小幡邦彦: "神経系:神経伝達物質の合成と代謝"生体の科学. 51・5. 447-448 (2000)
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[Publications] Obata K. ら(分担執筆): "Control and Diseases of Sodium Dependent Transport Protelns and Ion Channels."Elsevier, Amsterdam. 440 (2000)
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[Publications] 小幡邦彦(分担執筆): "脳神経科学イラストレイテッド"羊土社、東京. 364 (2000)