2000 Fiscal Year Annual Research Report
聴覚情報のシナプスおよび細胞レベルでの特徴抽出と処理機構の研究
Project/Area Number |
10480231
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Research Institution | KYOTO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
大森 治紀 京都大学, 医学研究科, 教授 (30126015)
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Keywords | 蝸牛神経核 / 台形体内側核 / 細胞内Ca2+ / 聴覚神経核 / 特徴抽出 / 個体成熟 / シナプス伝達 |
Research Abstract |
本研究は聴神経からの音情報の特徴抽出にどのようなシナプス伝達特性が必要とされるかを、個々のシナプスの形態および機能そして構成神経細胞の膜興奮性を含めて、蝸牛神経核及び幾つかの聴覚伝導路神経核において明らかにすることを目的としている。本年度は台形体内側核に形成されるシナプスの伝達特性が幼児期には非同期性の放出成分が多く、個体の成熟に伴い同期したシナプス伝達が実現されるメカニズムを、成熟したシナプスで、非同期性の放出機構を実現することで検証した。シナプス伝達物質の放出確率は生後発達に伴い増加する。これはシナプス前終末へのCa2+流入が生後発達に伴い増加し、さらにCa2+の除去機構も同時に発達することにより実現されると考えた。この検証のために、シナプス前終末へのCa2+流入をCd2+、w-コノトキシンおよびw-アガトキシンによって阻害した。Ca2+チャネル阻害剤によりCa2+流入を減少させることで、神経伝達物質放出は多少非同期的になったがその程度はわずかであった。Ca2+流入の阻害と同時にCa2+除去機構を阻害した。Li+によりNa+/Ca2+交換機構を阻害した場合、未成熟のシナプスと同程度の非同期した伝達物質放出が見られた。さらにeosine-YによりCa2+ポンプを阻害することによっても同様の非同期性伝達物質放出の増加が見られた。こうした結果から、シナプス伝達の成熟にはシナプス前終末へのCa2+の流入量の増加とともに、Ca2+除去機構の発達が必須であることを明らかにした。
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