2000 Fiscal Year Annual Research Report
スクリプト理論に基づく発達障害児のコミュニケーション機能に関する体系的・実用的研究
Project/Area Number |
10551007
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Research Institution | Yamagata Prefectural University of Health Science |
Principal Investigator |
佐竹 真次 山形県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (90299800)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
関戸 英紀 横浜国立大学, 教育人間科学部, 助教授 (50293163)
長崎 勤 筑波大学, 心身障害学系, 助教授 (80172518)
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Keywords | コミュニケーション / スクリプト / 共同行為ルーティン / 自閉症児 / 発達障害児 / 情動 / 心の理解 / 叙述機能 |
Research Abstract |
「各種スクリプトの事例への効果」ならびに「スクリプトで習得したコミュニケーションの社会生活への般化」に関する臨床研究を行った。 関戸は、自閉症児に対する共同行為ルーティンを用いたあいさつ語(「いってきます」、「ただいま」、「ありがとう」)の指導を、「買い物」ルーティンを用いて行った。その結果、あいさつ語の自発的表出が可能となり、またある程度の日常場面での般化および指導終了5ヵ月後の維持が確認され、対象児にとって、"出かける"、"帰宅する"、"物をもらう"という3つの場面の文脈の理解が可能になったとされた。 佐竹は、広汎性発達障害の幼児を対象とし、家庭生活と保育園生活の中の代表的スクリプト成分を調べ、それをもとに、おやつスクリプト、カップケーキ作りスクリプト、買物スクリプト、貼り絵スクリプト、遊びにまざるスクリプト、教示要求スクリプトなどを選定して指導した。その結果、挨拶、行為要求、物の要求、援助要求、教示要求、叙述、謝辞などのコミュニケーション・スキルが習得され、家庭・保育園におけるコミュニケーションと適応行動について顕著な改善がみられた。このことから汎用性の高いスクリプトのバッテリーの重要性について指摘された。 長崎は、日常のスクリプトの中には「豊かな情動」や「心の理解」が含まれており、スクリプト指導は単に、語彙・文法、伝達機能の指導だけでなく、「情動」や「心の理解」にこそ本領を発揮する、すなわち、スクリプトという文脈設定の中では、非定型な場面に比べ、「他者の心の読みとり」がより容易になるという考えのもとに、他者の選択行動(意図)を尊重する行動の指導を展開した。 来年度は、スクリプトで習得したコミュニケーションの社会生活への般化をさらに調査するとともに、情動を喚起したり理解したりするのに有効で叙述機能を促進するようなスクリプトの開発にも努める。さらに、これまでの研究を体系的に総括する予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 佐竹真次,長崎勤,関戸英紀,宮崎眞,長澤正樹: "生活の文脈を生かしたコミュニケーションの指導-スクリプトを利用した指導を取り巻く現状-<シンポジウム>"日本特殊教育学会第38回大会発表論文集. 147 (2000)
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[Publications] 長崎勤,山田明子,亀田千春: "ダウン症児における「心の理解」の学習可能性の検討-「他者の欲求意図を尋ねる」ことの指導をとおして-"特殊教育学研究. 38・3. 11-20 (2000)
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[Publications] 小野里美帆,長崎勤,吉井勘人,中村晋,大塚真紀,丸山大樹,山内まどか,神田基史,池田由紀江: "自閉症幼児への要求サイン習得を促す指導-習得の発達基盤についての検討:修正行為の出現と要求行動の広がりとの関連から-"日本特殊教育学会第38回大会発表論文集. 343 (2000)
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[Publications] 吉井勘人,長崎勤,瀬戸口裕二,小野里美帆: "自閉症児に対する相互的コミュニケーション指導-情動共有を伴うボールのやりとりフォーマットの習得を通して-"日本特殊教育学会第38回大会発表論文集. 344 (2000)
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[Publications] 中村晋,長崎勤: "ゲームルーティンによる自閉症児のコミュニケーション指導-フォーマット成立過程における情動の役割の検討-"日本特殊教育学会第38回大会発表論文集. 345 (2000)
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[Publications] 大塚真紀,長崎勤: "発達障害児への相互遊びフォーマットによるコミュニケーション指導-「他者と関わること自体を目的化する」ことの援助-"日本特殊教育学会第38回大会発表論文集. 346 (2000)