Research Abstract |
鉄筋コンクリート柱と外巻き鋼板と炭素繊維シート,鉄筋コンクリート床板と鋼板などの複合構造体の強度および耐久性は,当然ながら構成部材そのものの強度とこれら材料間の付着特性および付着によって双方に発生する拘束効果に依存している.特に,このような複合構造体の強度および変形能を評価する方法として材料間の付着や付着に伴って生じる変形拘束効果まで取り込んだ設計法は未だ確立されておらず,本研究では,鋼板やCFシートで補強された床板や柱の複合体としての強度の評価を付着と拘束の効果を取り入れて明らかにする.平成10年度の研究においては,コンクリートと炭素繊維シートおよび鋼板との付着特性を把握することを第一の目標とした.本検討を実施にあたっては,接着面での法線方向の力を考慮.した一面せん断試験による付着強度試験装置を開発する必要があり,2台の油圧ジャッキを用いて試験機を試作し,その結果以下のことが明らかになった:接着剤がコンクリートに含浸するため接着部での破壊形態としては,(1)接着剤が含浸したコンクリート部での引張・せん断破壊,(2)付着面での剥離,(3)接着剤の引張破壊の3形態である.したがって,接着材の強度と弾性係数,接着厚などをパラメータとして詳細な検討が今後必要である.また,コンクリート梁と鋼梁を重ね,万能試験機により3点載荷の重ね梁の曲げ試験を行なった.接触面に潤滑材を塗り付着を切り,重ね梁の曲げ試験を行なったところ,梁の曲げ強度は,単独の梁の曲げ強度の累加で表せた.一方,接着剤で梁どうしを接着し曲げ試験を行なったところ,付着が切れるまではほぼ線形的な挙動をするものの,付着が切れると同時に耐力が低下し,個々の梁が単独で挙動することが明らかになった.ここでは,付着強度の大小が,重ね梁の最大曲げ耐力に及ぼす影響が大きいことが明らかになった,今後は,実験結果を基に従来の耐力評価式を付着特性を考慮できるような修正式を提案し,設計への導入を具体化する.これを支援するための構造解析モデルを考案する必要があるが, ′パラメトリック解析により前述の修正評価式の妥当性を検討するとともに,付着強度試験をこの構造モデルにより再現することで,構造モデルの精度を確認し,付着特性を逆解析する予定 .である.
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