1998 Fiscal Year Annual Research Report
環境ストレス応答の中枢機序における脳内肥満細胞の意義
Project/Area Number |
10557008
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
片渕 俊彦 九州大学, 医学部, 講師 (80177401)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
廣田 誠一 大阪大学, 医学部, 助手 (50218856)
安部 務恵 九州大学, 医学部, 助手 (60264040)
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Keywords | 肥満細胞増殖因子 / c-kitミュータントラット / シナプス可塑性 / 空間認知学習 / 海馬スライス / Paired-pulse facilitation / 長期増強 / CA3領域 |
Research Abstract |
本年度は、環境ストレス応答における肥満細胞、およびc-kit/SCFの意義を明らかにするため、肥満細胞欠損動物(c-kitミュータントラット)およびそのワイルドタイプ(正常)ラットを用いて、海馬におけるシナプス可塑性や学習行動へのc-kit/SCFの関与を、正常およびミュータントラットで比較検討した。 c-kit受容体の自己リン酸化部位近傍の4個のアミノ酸が欠損し、チロシンキナーゼ活性が低下しているミュータント(Ws/Ws)ラットでは、モリスの水迷路による空間認知学習行動が、ワイルドタイプのコントロールラット(+/+)と比較して有意に障害されていた。水迷路学習において、学習後、プール内のステージを除去してプローブテストを行ったところ、ミュータントラットでは、もともとステージがあった場所への滞在時間がコントロールラットと比較して有意に短く、記憶の保持も障害されていることが明らかになった。 さらに、海馬スライス標本を用い、CA1およびCA3領域におけるWs/Wsラットのシナプス伝達の異常について検討したところ、Ws/Wsの2発刺激によるPaired-pulse facilitation(PPP)はCA1では+/+と比較して軽度抑制されていたが、CA3では著明に抑制されていた。テタヌス刺激によるシナプス増強は、CAlではテタヌス後増強(テタヌス後2分以内、PTP)および短期増強(10〜15分、STP)は+/+と比較して抑制されていたが、長期増強(55〜60分、LTP)は、有意差がなかった。一方、CA3のPTPは+/+と差はなく、STPおよびLTPが有意に抑制されていた。テタヌス刺激60分後に再びPPFテストを行うと、CAlおよびCA3のどちらも+/+と有意差はなかったが、刺激強度を小さくすると両領域でWs/WsのPPFは抑制されていた。一方、テタヌス刺激前のPPF値と、テタヌス刺激後のPPFの変化度の相関関係を検討すると、CAlではWs/Wsおよび+/+で負の相関があったが、CA3では+/+で見られた負の相関がWs/Wsでは消失していた。さらに、CA1では、+/+はPPFとPTPに正の相関があり、PPFとLTP、およびPTPとLTPには相関はなかったが、Ws/Wsでは、PPFとPTPの相関が消失していた。一方、+/+のCA3では、PPF、PTP、LTPのどの二つの間にも正の相関があったが、Ws/WsのCA3では、PPPとPTPのみ正の相関があった。
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[Publications] Hori, T.: "Cell biology and the functions of thermosensitive neurons in the brain. Brain Function in Hot Environment: Basic and Clinical Perspectives." Progress in Brain Reserch. 15. 9-23 (1998)
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[Publications] Hori, T.: "Neuroimmunomodulatory actions of hypothalamic interferon-α." Neuroimmunomodulation. 5. 172-177 (1998)
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[Publications] 片渕俊彦: "発熱とサイトカイン." Clinical Neuroscience. 16(4). 73-75 (1998)
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[Publications] 片渕俊彦: "ストレスと免疫系." 感染炎症免疫. 28(2). 106-115 (1998)
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[Publications] Hori, T.and Katafuchi, T.: "Discussions on Directions in Psychoneuroimmunology and Cancer" Nishimura Smith-Gordon Co. Ltd., 166 (1996)
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[Publications] 片渕俊彦: "内科学進歩のトピックス" 九州大学出版会, 394 (1998)
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[Publications] katafuchi, T.: "Brain and the Bio-defense System." Japan Scientific Societies Press/S. Karger, 248 (1998)
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[Publications] 片渕俊彦: "インターフェロン-その研究の歩みと臨床応用への可能性" ライフサイエンス, 211 (1998)
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[Publications] 片渕俊彦: "神経-免疫-内分泌.免疫学からみた神経系と神経疾患" 日本医学館(印刷中), 印刷中 (1999)
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[Publications] 片渕俊彦: "ストレスの事典" 朝倉書店(印刷中), 印刷中 (1999)