2000 Fiscal Year Annual Research Report
合成レチノイドによる核レセプターを介して肝癌細胞クローン除去機構に関する研究
Project/Area Number |
10557055
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Research Institution | GIFU UNIVERSITY |
Principal Investigator |
森脇 久隆 岐阜大学, 医学部, 教授 (50174470)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥野 正隆 岐阜大学, 医学部・附属病院, 講師 (10204140)
大森 正英 東海女子大学, バイオサイエンスセンター, 教授 (30278212)
四童子 好弘 県立長崎シーボルト大学, 看護栄養学部, 教授 (00111518)
白鳥 義宗 岐阜大学, 医学部, 助手 (20313877)
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Keywords | レチノイド / 肝癌 / 化学予防 / クローン除去 / 核内受容体 / アポトーシス / 分子標的 |
Research Abstract |
我々はレチノイドによる肝発癌抑制をテーマとして、一貫して研究を進めてきた。その結果、根治療法後の二次肝癌の発生を有意に抑制できることをまず1996年に発表した。さらに非環式レチノイドが二次原発性肝癌の発生を抑制するのみならず、肝癌の発生を抑制することにより患者の生命予後をも改善することを1999年に発表し得た。その作用機序をさらに明らかにするため、分化誘導とアポトーシス誘導機序の検討を進めている。本年度の重要な成績は、以下の通りである。 1)この非環式レチノイドは、単一の核内受容体にリガンドとして結合するのではなく、かなり広範囲の核内受容体と結合することが明らかとなった。また核内受容体のノックアウト細胞においては分化やアポトーシスの誘導ができないことより、分化誘導やアポトーシス誘導機序を考える上でも、今後の薬剤デザイン上も重要と考えられた。 2)関連する核内受容体のひとつであるレチノイドXレセプターが正常肝組織中と肝癌組織中ではリン酸化の状態や、代謝の速度に差があることが明らかになり、これが肝細胞の癌化と強く結びついている可能性が示唆された。 3)分化誘導された肝癌細胞では、次第にカスパーゼの活性化が起こり、アポトーシスが認められるようになる。これは他の選択的な核内受容体リガンドによる組み合わせ実験でも再現できることが明らかになった。また細胞の状態によってはトランスグルタミナーゼの活性化を起こしアポトーシスを誘導する系も存在している。 4)非環式レチノイドとインターフェロン(IFN)-β加えることにより相乗的にアポトーシスの誘導を高めることが出来る。この機序のひとつとして非環式レチノイドが、IFN受容体の膜表面への表出を誘導することが明らかになった。 これらの知見は、肝癌細胞内で変化を来した核内受容体を標的として、そのリガンドである非環式レチノイドを用いることにより、アポトーシスからすり抜けた癌細胞を再度分化させてアポトーシスに導くという、大きな発癌予防の戦略を支持するものとして、極めて重要と考えられる。
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[Publications] Moriwaki H.: "Nutritional pharmacotherapy of chronic liver disease : from support of liver failure to prevention of liver cancer."J Gastroenterol. 35. 13-17 (2000)
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[Publications] Nagaki M.: "Control of cyclin-cependent kinase inhibitors, p21 and p27, and cell cycle progression in rat hepatocytes by extracellular matrix."J Hepatol. 32. 488-496 (2000)
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[Publications] Nagaki M.: "High levels of serum interleukin-10 and tumor necrosis factor a are associated with fatality in fulminant hepatitis."J Infect Dis. 182. 1103-1108 (2000)
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[Publications] Miwa Y.: "Improvement of fuel metabolism by nocturnal energy supplementation in patients with liver cirrhosis."Hepatology Res. 18. 184-189 (2000)
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[Publications] Kato M.: "Both insulin sensitivity and glucose sensitivity are impaired in patients with non-diabetic liver cirrfosis."Hepatology Res. 17. 93-101 (2000)
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[Publications] Moriwaki Hisataka: "Frontiers in Hepatology-Progress in Hepatocellular Carcinoma Treatment"Tokyo, Springer-Verlag. 7 (2000)
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[Publications] Shiratori Yoshimune: "Immunoassays for PIVKA-II"Tokyo, Eisai Co., LTD. 7 (2000)