1998 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトの記憶システムにおける前頭葉の役割:非侵襲的機能画像による検討および臨床応用
Project/Area Number |
10557059
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 匡子 東北大学, 医学部・附属病院, 講師 (20271934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
山鳥 重 東北大学, 医学部, 教授 (10030892)
中里 信和 東北大学, 医学部, 助手 (80207753)
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Keywords | 記憶 / 前頭葉 / 作業記憶 / 予定記憶 / 脳磁図 / 事象関連磁界 / 前脳基底部健忘 |
Research Abstract |
本研究では,記憶の脳内機構のうち前頭葉の役割に焦点を絞り,検討を進めた.本年度はます前脳基底部健忘の患者を対象に,健忘の臨床的特徴を詳細に検討した.対象は前交通動脈動脈瘤術後の6名(女性2名,男性4名,年齢は45-61歳)である.全例,全般性注意および全般性認知は保たれていた.前向性健忘の特徴として,1)干渉効果を受けやすい2)再認が想起に比べて良好,どういう点が確認された.またエピソード記憶の主要な内容の想起に比べ,文脈情報である人や場所の記憶が低下していると考えられる症例が2例観察された.逆行性健忘について経時的に観察し得た1例では,過去の出来事の内容の想起はほとんど改善が見られなかったのに対し,その時間的順序の想起が時間と共に回復してきた.さらに作業記憶検査では,顕著な低下を示す例は認められなかった.また,新たに考案した予定記憶検査では,1例を除き良好な成績であった.従って,前脳基底部は作業記憶や予定記憶のシステムに直接は関与しないと考えられた. 一方,正常人を対象にした記憶に関する脳内システムの検討を,脳磁図を用いておこなった.対象は健常成人5名(女性3名,男性2名,年齢は24-39歳,いずれも右利き)である.単語の対連合学習をした後に再認課題を施行し,その時の事象関連磁界を記録した.その結果,対連合学習による事象関連磁界の振幅および潜時の変化が主として左前頭側頭葉外側を中心に認められた. 前脳基底部および前頭葉外側は記憶の異なったサブシステムに関与していることが推測された.今後,これらの連関につき損傷脳・正常脳の両面から検討進める予定である.
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Okuda J.Fujii T,Yamadori A,Kawashima R,Tsukiura T,Fukatsu R,Suzuki K,Ito M,Fukuda H: "Participation of the prefrontal cortices in prospective memory:evidence from a PET study in humans" Neuroscience Letters. 253. 127-130 (1998)
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[Publications] 月浦崇,鈴木匡子,藤井俊勝,山鳥重,小川達次: "健忘症患者における手続き記憶 -運動技能と知覚・認知技能との解離-" 神経心理学. 14・4. 216-224 (1998)