1999 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトの記憶システムにおける前頭葉の役割:非侵襲的機能画像による検討および臨床応用
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10557059
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
鈴木 匡子 東北大学, 医学部・附属病院, 講師 (20271934)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中里 信和 東北大学, 大学院・医学系研究科, 助手 (80207753)
山鳥 重 東北大学, 大学院・医学系研究科, 教授 (10030892)
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Keywords | 記憶 / 前頭葉 / 意味記憶 / 脳磁図 / 事象関連磁界 |
Research Abstract |
本年度はまず前頭葉病変を有する失語症患者を対象に、意味記憶からの単語の想起について検討した。対象は前頭葉を含む左一側性病変により軽度の失語症を呈した患者10名(女性2名、男性8名、年齢は39-79歳)である。対照群として前頭葉を含まない左一側性病変により軽度の失語症を呈した患者10名(女性5名、男性5名、年齢は41-72歳)にも同様の検査を施行した。失語症の程度は呼称成績を中心に評価し、両群で差がなかった。全例、全般性注意は保たれていた。検査として、カテゴリー名を与えての語列挙課題、語頭音(音節)を与えての語列挙課題を施行し、両群間の差を検討した。その結果、前頭葉群では対照群に比べて、半数のカテゴリーで想起しうる単語の数が有意に少ないことがわかった。従って、刺激に依存せず、自発的に意味記憶から単語を想起する際には前頭葉が重要な働きをすることが示唆された。 一方、正常人を対象に、記憶に関する脳内システムの検討を脳磁図を用いておこなった。対象は健常成人8名(23-29歳、1名を除き右利き)である。文の意味的整合性を、意味記憶から判断する課題を施行し、それに関わる事象関連磁界を記録した。その結果、意味的に不整合な場合に、潜時400ms前後に誘発磁界が認められた。この事象関連磁界は右利き者で左半球優位に出現し、電流双極子は左上側頭溝周辺に推定された。従って、文レベルの意味記憶からの判断には、前頭葉ではなく、左側頭葉が重要であることが示唆された。 以上より、意味記憶からの想起や意味記憶に基づく判断には、エピソード記憶とは異なる神経基盤があり、意味記憶からの自発的な単語の想起には前頭葉が重要であると考えられた。
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Research Products
(4 results)
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[Publications] Fujii T.,Yamadori A.,Endo K.,Suzuki K.,Fukatsu R.: "Disproportionate retrograde amnesia in a patient with herpes simplex encephalitis"Cortex. 35. 599-614 (1999)
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[Publications] Okuda J.,Fujii T.,Yamadori A.,Kawashima R.,Tsukiura T.,Ohtake H.,Fuktatsu R.,Suzuki K.,Itoh M.,Fukuda H.: "Retention of words long-term memory: a functional neuroanatomical study with PET"Neuro Report. 11. 323-328 (2000)
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[Publications] Suzuki K.,Yamadori A.: "Intact verbal description of letters with diminished awareness of their forms"J Neurol Neurosurg Psychiatry. in press (2000)
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[Publications] 目黒佑子、鈴木匡子、月浦崇、藤井俊勝、山鳥重、工藤允哉: "頭部外傷後遺症児の記憶機能-1症例におけるエピソード記憶と意味記憶の検討-"脳神経. 51. 985-990 (1999)