2000 Fiscal Year Annual Research Report
発生工学的手法を用いた筋変性の分子機構の解明と新たな治療法の開発に関する研究
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10557065
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Research Institution | National Institute of Neuroscience, NCNP |
Principal Investigator |
武田 伸一 国立精神・神経センター, 神経研究所・遺伝子疾患治療研究部, 部長 (90171644)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 友子 国立精神・神経センター, 神経研究所・遺伝子疾患治療研究部, 室長
花岡 和則 北里大学大学, 理学部・分子発生, 教授 (40189577)
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Keywords | 基底膜 / メロシン / 先天性筋ジストロフィー / dy3Kマウス / MHC IIB / アポトーシス / 筋再生 / インテグリン |
Research Abstract |
我々はメロシン欠損先天性筋ジストロフィーのモデルマウスであるlaminin alpha2 chain遺伝子に変異を持つマウス(dy3K)を作成し、その筋変性の機序を調べた。メロシン欠損の筋ジストロフィーでは、Duchenne型筋ジストロフィー(DMD)と同様、fast twitch fiberの中でもMHC IIBタイプの筋線維が主に変性を起こすと考えられてきた。そこで、MHC IIBを欠損させたマウスを、アメリカ コロラド大学のLeinwand博士から譲渡してもらい、dy3Kとかけ合わせて、LAMA2(-/-)MHC IIB(-/-)のダブルノックアウトマウスを作成し、ラミニン欠損による筋変性に対するfiber typeの影響を検討した。しかしMHC IIBを欠損したマウスでは、ラミニン欠損による筋変性はdy3Kと同程度で起こり、前脛骨筋の筋線維数、重量、マウスの寿命に有為差はなく、laminin alpha2 chain欠損によう先天性筋ジストロフィーにおいて従来言われているfast typeの中で、特にIIBfiberが筋変性に陥りやすいのではないかと言う仮説は否定された。次にdy3Kの初期段階の変性のメカニズムを検討したところ、筋変性が起こりはじめる生後9-10日に、エバンスブルー色素法により、一過性の膜透過性の異常な亢進を検出した。次に、筋変性後におこる筋再生途上の筋管で、TUNEL陽性細胞が出現し、アポトーシスに関与する活性型のcaspase-3の発現が検出された。それらの結果として、筋再生が著しく抑制されていたのである。従って、ラミニン欠損による筋ジストロフィーでは筋再生過程に細胞死が誘導され、筋再生が著しく抑制されることが明らかになった。しかも、正常マウスの再生筋では発現が誘導されるラミニンα5鎖の発現が、dy3K骨格筋の再生過程では誘導されないことが、こうした現象の背景となっていると考えられた。今後、基底膜の異常によるアポトーシスを抑制することがラミニン欠損による筋ジストロフィーの治療に結びつく可能性がある。
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[Publications] Iwao M et al.: "Thymic atrophy in laminin-alpha-2 chain deficient mice is a result of..."Immunology. 99. 481-488 (2000)
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[Publications] Ikemoto M et al.: "Space shuttle flight (STS-90) enhances degradation of rat myosin heavy..."Microscopy Research and Technique. 48. 181-191 (2000)
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[Publications] Yokota T et al.: "Aquaporin-4 is absent at the sarcolemma and at perivascular astrocyte..."Proc.Japan Acad. 76B. 22-27 (2000)
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[Publications] Yamamoto K et al.: "Immune response to adenoviral-delivered antigens upregulates utrophin....."Human Gene Therapy. 11. 669-680 (2000)
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[Publications] 宮越友子,武田伸一: "筋衛星(サテライト)細胞と遺伝子性筋疾患の遺伝子治療"神経研究の進歩. 45. 54-62 (2001)
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[Publications] 武田伸一: "ポストゲノム医療の展望:総論 神経疾患"日本臨床. 59. 19-30 (2001)
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[Publications] 武田伸一 他: "筋肉細胞、遺伝子治療開発ハンドブック"株式会社 エヌ・ティー・エス. 1061 (1999)