2000 Fiscal Year Annual Research Report
概日リズム障害を伴う疾患での生体時計関連遺伝子の解析、及び治療法の開発
Project/Area Number |
10557089
|
Research Institution | Saitama Medical School |
Principal Investigator |
海老沢 尚 埼玉医科大学, 医学部, 講師 (00201369)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩瀬 利郎 埼玉医科大学, 医学部, 助手 (80306307)
|
Keywords | 睡眠相後退症候群 / 非24時間睡眠覚醒症候群 / 生体時計関連遺伝子 / 遺伝子多型 / 治療法 |
Research Abstract |
概日リズムは脳機能の一つであるが、その生成機構に種を越えて類似の遺伝子が関与していること、哺乳動物の場合、生体時計機能が視交叉上核という限られた領域に存在するなどの利点もあり、その研究は近年急速な進展を遂げた。そして、哺乳動物の場合も時計遺伝子の多型が概日リズムの異常に結びつくことが明らかとなり、ヒトの概日リズム障害やその個体差も遺伝子の多型に基づくのではないかと考えられた。 我々は睡眠相後退症候群(DSPS)、非24時間睡眠覚醒症候群(N-24)などの概日リズム障害を対象に生体時計関連遺伝子であるメラトニン1A,1B(Mel1A,Mel1B)受容体遺伝子及びPer3遺伝子、Clock遺伝子の解析を進めた。Mel1A,Mel1B受容体遺伝子からはそれぞれ2種類ずつのミスセンス多型を見いだし、1A受容体のR54W変異がDSPSでは正常被験者の約3倍の頻度で見いだされ、培養細胞に発現させると受容体の結合能が変化していることを示した。また、Per3遺伝子はミスセンス多型の組み合わせによって4つのハプロタイプに分かれ、うち一つはDSPSの約15%に認められる(正常被験者では2%)事を見いだした(P=0.037)。このハプロタイプから産生される蛋白の機能が変化しているか、今後調べていく予定である。Clock遺伝子についてもほぼ解析を終え、ミスセンス変異を含む複数の変異を見いだしている。 最近米国のグループが睡眠相前進症候群の一部の原因がPer2遺伝子の変異であると報告した。Clock遺伝子の3'-非翻訳領域の変異が朝型・夜型に影響するとの報告もある。これら時計遺伝子の多型の組み合わせで概日リズム障害や概日リズムの個体差が出現すると思われる。今後も時計遺伝子についての解析を進め、変異の組み合わせがどのように表現型に結びつくか調べていく。
|
Research Products
(9 results)
-
[Publications] Takashi Ebisawa et al.: "Association of structural polymorphisms in the human period3 gene with delayed sleep phase syndrome."EMBO Reports. (In press). (2001)
-
[Publications] Masaaki Ikeda,Wanglie Yu,Momoki Hirai,Takashi Eblsawa et al.: "cDNA cloning of a novel bHLH-PAS transcription factor superfamily gene, BMAL2 : Its mRNA expression, subcellular distribution, and chromosomal localization."Biochem.Biophys.Res.Commun.. 275. 493-502 (2000)
-
[Publications] 海老澤尚: "睡眠覚醒リズム障害と時計遺伝子"神経研究の進歩. 44・6. 891-897 (2000)
-
[Publications] 海老沢尚: "生体時計の分子機構-ストレスへの時間生物学的アプローチに向けて-"日本神経精神薬理学雑誌. 20. 107-111 (2000)
-
[Publications] 海老沢尚: "家族性致死性不眠症"Clinical Neuroscience. 18・10. 94-95 (2000)
-
[Publications] 海老沢尚: "生体リズム障害の分子生物学"臨床脳波. 42・10. 629-633 (2000)
-
[Publications] 海老澤尚: "睡眠覚醒リズム障害と遺伝子変異"自律神経. 37・2. 158-162 (2000)
-
[Publications] 海老澤尚: "概日リズム障害と遺伝子変異"脳と精神の医学. 11・1. 1-7 (2000)
-
[Publications] 山内俊雄,海老澤尚: "生物学的精神医学研究の限界と将来"精神医学. 42・3. 263-271 (2000)