1999 Fiscal Year Annual Research Report
初期胚・胎児異常の疾患遺伝子診断と形態機能学的解析
Project/Area Number |
10557149
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
吉村 泰典 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (10129736)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石本 人士 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (10212937)
宮崎 豊彦 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (20174162)
末岡 浩 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (90162833)
|
Keywords | 着床前遺伝子診断 / Duchenne型筋ジストロフィー / ジストロフィン遺伝子 / パワードプラ法 / fetal angiography |
Research Abstract |
遺伝子病の中でDuchenne型筋ジストロフィー(DMD)をモデル疾患として、疾患遺伝子の診断について検討した。既存のジストロフィン遺伝子塩基配列よりホットスポットであるexon8・44・45・51を対象とし、Nested PCRの効率の良いprimerを設計、至適条件を決定した。インフォームドコンセントを得た上で、DMD患者および非疾患コントロール男性から得たリンパ球を内径20μmのマイクロピペットにて顕微操作下に単一リンパ球を採取し、診断に供した。2種のプライマーを用いて並列してPCRを施行、一方をpositive controlとし、非疾患単一細胞及び疾患単一細胞からのMultiplex Nested PCRによる診断精度の検定を行った。その結果、非疾患単一リンパ球を用いたMultiplex Nested PCRでは、exon8は85%、exon44は80%、exon45は85%、exon51は80%の診断成功率を得た。また疾患単一リンパ球を用いたMultiplex Nested PCRでは、exon8は85%、exon44は80%、exon45は80%の診断成功率であった。また、本法より得られた増幅産物を用いて、確認のためシークエンサーによる遺伝子解析を施行し、既存のexonの塩基配列と99%の相同性が得られた。以上より、本診断系が単一細胞からのジストロフィン遺伝子のdeletion診断に有用であることが示唆された。またprimer extension preamplification(PEP)法を必ずしも必要としない技術開発に成功した。本研究は、DMDを中心として、単一遺伝子疾患の着床前遺伝子診断法の確立に極めて重要な一歩となるものと考えられた。 一方、胎児診断については胎児超音波検査を実施の際にfetal angiographyを行い、その意義について検討した。正常胎児症例の観察では、特に頭蓋内の血管構築や臍帯刺入部の血管走行の観察にパワードプラ、カラードプラが有用であると考えられた。他院からの紹介例やハイリスク群(胎児後頸部肥厚が認められた症例を含む)を対象とした検討では、上記正常例で挙げた点の他、血管病変の存在診断はもちろんのこと、病変の鑑別、病変の位置、臓器の偏位(肝など)の把握等にfetal angiographyは有用であった。ガレン静脈瘤1例、リンパ管腫4例(血管腫との鑑別)、肝血管内皮腫2例(存在診断)、肺分画症1例(異常栄養血管の存在診断)、先天性嚢胞性腺腫様肺奇形3例(肺分画症との鑑別)、脳室拡大および全前脳胞症8例(脳血管の偏位)、仙尾部奇形腫1例(動静脈シャントの存在診断)、横隔膜ヘルニア2例(肝の偏位)では、従来のB-モードによる断層像のみによる観察に比べfetal angiographyが優れていた。また、腹壁破裂4例、臍帯ヘルニア2例の検討においては特に、腹壁破壊の1例では妊娠15週と早期からの診断がfetal angiographyにより可能となった。今回の検討から、可及的早期からのfetal angiographyの施行は、胎児構造異常の出生前診断に血流という情報を加えるという点で有用であると考えられた。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] Maruyama T,Yoshimura Y et al.: "Induction of thioredoxin,a redox-active protein,by ovarian steroid hormones during growth and differentiation of endometrial stromal cells in vitro"Endocrinology. 140. 365-372 (1999)
-
[Publications] Hashiba T,Yoshimura Y et al.: "A simplified method for lysis of single cells in PCR-based preimplantation genetic diagnosis"Jpn J Fertil Steril. 44. 253-255 (1999)
-
[Publications] Kuji N,Yoshimura Y et al.: "Presence of human immunodeficiency virus in semen and its elimination by semen processing:current research"Assist Reprod. 9. 160-170 (1999)
-
[Publications] Osawa Y,Yoshimura Y et al.: "Assessment of the dominant abnormal form is useful for predicting the outcome of intracytoplasmic sperm injection in the case of severe teratozoospermia"J Assist Reprod Genet. 16. 436-442 (1999)
-
[Publications] Nakazawa K,Yoshimura Y et al.: "Study on melatonin in human and rat placental tissue"Trophoblast Res. 467-474 (1999)
-
[Publications] Hashiba T,Yoshimura Y et al.: "Genetics.An Accurate and rapid gender determination assay in single cells by the capillary polymerase chain reaction method"J Assist Reprod Genet. 16. 551-554 (1999)