Research Abstract |
近年,高齢者の増加と車椅子の普及によって,車椅子に乗った患者の歯科医院への来院が多くなってきている.その際,車椅子に乗った患者が,車椅子から降りることなく歯科治療を受けることができれば,患者の移動がなく,患者が安心して治療を受けることができ,その臨床的意義は大きい. 本研究の目的は,車椅子に乗ったまま,患者の歯科治療ができる歯科用ユニットの開発にある.今後3年間で,車椅子患者対応の歯科用ユニットを完成させなければならないが,今年度(平成10年度)は,まず昇降機構を開発した.従来の歯科用ユニットでは,チェアーの昇降機構は,椅子の下に組み込まれているのが一般的である.しかし,この方式では,昇降機構が床面に固定されているため,車椅子に乗った患者が,チェアーまで接近することができず,車椅子に患者が乗ったまま治療できる昇降機構の設置は不可能であった.そこで,床面を完全にフリーにするため,スピットン部の横に,片持ち梁の原理で車椅子を保持して,昇降する機構を設置することを考案した.片持ち梁にすることによって,床面には昇降機構が置かれず,車椅子の患者の出入りがスムーズにできる. 今回開発した昇降機構は,患者が車椅子に乗ったまま治療でき,安頭台も昇降機構と連動し,昇降幅は約40cm,昇降方法は電動方式にした.また,車椅子を載せてチルト(傾斜)できる機構を,昇降機構に連結した装置に具備した.この機構を具備することによって,歯科医師は,立位ではなく,座位でも治療することができる. 次年度(平成11年度)は,この昇降機構を歯科用ユニットに組み込み,健常者用のユニットと車椅子患者用のユニットの一体化を検討していく.
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